2025年シーズン最終戦のバレンシアGPで、ホンダHRCカストロールが大きな節目を迎えた。ルカ・マリーニが7位でチェッカーを受け、今季の最大目標だったコンセッションランク『D』から『C』への昇格を現実のものとした。年間を通して改善を重ねた結果が、明確な形で結実した格好だ。

苦闘からの巻き返し。ホンダが掴んだ“Cランク”という勲章
2025年シーズン、ホンダはシーズン序盤こそ低迷を強いられたが、開発の手を緩めることなく一歩ずつ前進。最終的に1勝と3度の表彰台を獲得し、コンストラクターズランキングでは前年の75ポイントから210ポイント増の285ポイントを記録。ランキング4位に食い込み、確実な進化を印象づけた。
その集大成として迎えたバレンシア。ルカ・マリーニが安定感ある走りで7位に入り、コンセッション制度のランク昇格に必要なポイントを確保。この結果、ホンダは『C』ランクへと昇格し、2026年シーズンに向けて開発環境が一段と整うこととなった。
一方、同制度の中で他メーカーに大きな変動はなし。ドゥカティが最高位の『A』ランクを維持し、KTMとアプリリアは『C』、ヤマハは依然として『D』ランクのままとなっている。
コンセッションシステムとは:ファクトリーの成績で開発権に差が出る新制度
この「コンセッション制度」は2024年から正式に導入された新しい技術優遇制度で、グランプリコミッションが2023年11月に発表したもの。成績に応じて各ファクトリーチームを『A』『B』『C』『D』の4段階にランク分けし、それぞれに異なる開発権が与えられる仕組みだ。
評価対象は、2つの期間で獲得したポイント数に基づく:
- 第1期間:シーズン開幕戦から最終戦まで
- 第2期間:サマーテスト禁止期間終了後から翌シーズンのサマーテスト禁止前まで
各期間での最大ポイントに応じ、開発に関わる以下の条件が変化する:
| 項目 | ランクC | ランクD |
|---|---|---|
| テスト用タイヤ本数 | 220本 | 260本 |
| プライベートテスト | テストライダーおよびレギュラーライダー | 同左 |
| テストサーキット | 事前指定の3サーキット | 任意のサーキット可 |
| ワイルドカード参戦回数 | 6回 | 6回 |
| エンジン基数 | 7~8基 | 9~10基 |
| エンジン仕様 | 凍結 | 自由開発可 |
| エアロボディ更新回数 | 1回 | 2回 |
ホンダは『D』から『C』に昇格したことで、テストタイヤの供給数が減り、エアロ更新回数が1回に制限される一方で、エンジン開発が凍結となる。この制限が設けられるということは、ファクトリーとしての実力が認められつつある証でもある。
進化の手を止めず、ホンダは2026年へと突き進む
バレンシアで示されたホンダの進化は、単なる一時の結果ではない。コンセッションランクの昇格によって得た「より厳しい条件」こそが、ホンダの本質的な復活を裏づける。ライダーとマシン、そしてチームが一体となって掴んだCランク。それは、2026年シーズンへ向けた確かな第一歩だ。
開発の猶予が減るということは、それだけ自力で勝負できる位置に戻りつつあるという証明。火曜日から始まる次のシーズンに向けて、ホンダHRCはすでに戦いのギアを上げている。
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。