カタールGPの土曜日のセッションキャンセルについて、レースディレクションのカピロッシがプレスカンファレンスを行っています。ロサイル・インターナショナル・サーキットは路面の排水性が極端に悪い(※そもそも排水の事を考慮されて作られていないようです。)ため、トラック上に溜まった水をポンプも使って排水しているがどうしようもない状態とのこと。レースディレクションのカピロッシの答えも、「基本的に明日の状況で判断をする、天候の事は読めないから仕方ない」に終始し、明確な方向性は見えません。

「天候によって、なぜAプラン、Bプラン、Cプランという形で用意をしていないのか?」という質問に対し「レースウィークの中では異なるタイムスケジュールを作るのが難しく、天候の事は読めないし、何が起こるかはわからない。」と回答していることから、ロサイルの夜間のライト照明の中、ウェット路面でも走行は可能という判断をしておきながら、そもそも大雨が降ったらどうするのか?という類の想定は一切していなかったということでしょう。

(Photo courtesy of michelin)


 

ニック・ハリス

「さて、皆さん真ん中にはロリスだけいるわけですが。。非常に難しい夜になりましたが、完全に正しい決断ですね。」

ロリス・カピロッシ

「ええ、我々にとっても簡単な1日ではありませんでした。セッションを延期することでトラックの状況を理解しようとしていました。問題を解決出来ると思っていたんですが、問題は我々が思っていた以上に大きい事がわかりました。そのためセッションをキャンセルするという決定をしました。このトラックの問題は水が排水されないということです。基本的にカタールでは雨天は想定していませんから、そもそも水が排水がされないんです。

「ただMoto2、Moto3のテスト、そして今日のコンディションからわかったことでもありますが、来シーズンに向けては何らかの対策を施すつもりです。ただ現状はこういう状況です。明日に関しては全てのクラスでウォームアップ時間を増やしていますが、良い天候となることを願っています。今日も色々と改善作業をしていますが、明日予選を行わないという決定をしたのは、現状も明日の夕方から夜にかけてのレースのため、トラックコンディションを改善する作業を続けているためです。」

 

ニック・ハリス

「2つの大きな問題としては水がトラックを横切って流れていること、そしてランオフエリアのうちいくつかが湖のようになっていることですね。」

ロリス・カピロッシ

「ランオフエリアもそうなんですけど、問題としては排水がされないので、雨が多いと水が地中から上がってきてしまうということなんです。そのためポンプを使用して水をトラックの外に排水しようとしているんですが、作業をして”これで良い状態になった”と思っても、10分後には、また水が地中から染み出して来てしまうんです。ですから問題を解決出来ないでいるんです。ですから未だに作業を続けていて、ようやく少し状況が良くなってきたところです。ただ、未だにトラックはレースの準備が出来ていない状況です。」

 

ニック・ハリス

「明日の天候はあまり良くないようです。」

ロリス・カピロッシ

「引き続き注視はしていますが、朝の天気は良くないですね。どうやら明日の朝も少し雨が降りそうな予報です。11時の後は雨が止むようで、その後はずっと雨は無さそうなんですけどね。良い天候を祈るのみですが、こればかりはコントロール出来ませんからね。」

 

ニック・ハリス

「私からの最後の質問ですが、あなた達がテストを行った時に、ライダー達は”レースが出来るはずだ”と述べたのであって”レースをやるべきだ”述べたわけではないと思いますが。」

ロリス・カピロッシ

「私達がテストを行ったのは2月の夜で、ここは誰も夜間にテストを行ったことがないというのが実情でした。テストを行った時は夜間で路面もフルウェットでした。その際は視認性も良く、全てのライダーにテストをする機会を与えようと考えました。ただ第一にこの決定を維持しようとは思いません。こうした決定というのは常にライダーからのものです。自分が決定するのではなく、ライダーがあくまで決定するものです。ですから、ライダー達にトラックコンディションをテストするという機会を与えたんです。そして今日のこの経験の後に言えるのは、日中であろうが夜間であろうが、雨の後のレースは不可能だと言うことです。トラックに排水設備がない状態では日中であっても関係ありません。トラックから水が排水されない以上はレースは出来ません。

「これはカタールだからということではなくて、マレーシアでも同じ問題がありましたし、ヘレスでもミサノでも一緒です。結局全てのトラックで同じなんです。トラック上に水が大量にある場合はキャンセルをする必要があります。ミサノでも数年前に同様の理由でレースがキャンセルされましたし過去にもこうしたことは起きています。自分達運営側にとっては、幸運にも今回は夜にレースを開催するか否かという問題でした。個人的にはトライしてみるべきだと思いますが、残念ながらそうした機会がありません。ライダー達も言っていたように来年は何かしらそういう対策を取りたいと思いますし、練習日の最後にライダー全員にテストをするという機会を与えたいですね。」
 

ニック・ハリス

「ロリスありがとう。それではフロアからの質問はありますか?」


(Photo courtesy of michelin)

 

Q

「ロリス、明日もし同じ問題が起きてライダーがトラックをテストして、ウェットではライディング出来ないという話になった時はキャンセルになるんですか?」

ロリス・カピロッシ

「先程も話があったように、もし雨の場合でトラック上にそこまで水がない場合は、ライダーにトラックコンディションを確認してもらいます。雨がザッと降って止むかもしれませんからね。ライダーがトラックを確認して”これならレースは出来る”という話になれば、通常どおりレースを行います。もし雨が多くてトラック上に水が多いのであれば開催は不可能です。明日の夜に今日のような事態となれば、その時はまた別の解決策を探しましょう。」

 

Q

「ということはキャンセルするのか、どうなのでしょうか?」

ロリス・カピロッシ

「キャンセルする事になるでしょうね。基本的にはキャンセルはしたくないんですがね。キャンセルとなれば2009年のように月曜日にレースを開催することになるでしょう。

 

Q

「あなたのライダーとして、ロリス・カピロッシとしての個人的な意見としてですが、ロサイルサーキットを排水性を持たせて作り直すというのは、路面のバンクを変えたりランオフエリアを変えたりと、大変な作業になると思いますが、これについてはどう思いますか?」

ロリス・カピロッシ

「トラックとはこうした問題を改善するために既に話をしています。ライダー達からも路面が2004年からのものであるだとか苦情が出ていますからね。来年に関してサンプリングもしていますが、間違いなく来年に関しては対策を施しますよ。」

 

Q

「トラックは完全に芝に囲まれた作りですが、これは雨天の場合にライダーがランオフした時に滑りやすいとして問題だとは思いませんか?」

ロリス・カピロッシ

「過去にはさらに芝部分を増やして欲しいということで対策をしたんですが、さらにまた変更をしようと考えているわけです。ただ、現状は状況はそこまで悪くないと思っていて、まずはトラックの人工芝をほとんど取り除きました。これが第一ステップで、次に追加で増やした芝について減らしていくかどうかという部分について対策をしようと考えています。」

 

Q

「2つの問題について、1つはレースを夜間に開催することについて路面の反射についてテストを行っていますが、もう1つは排水性の欠如によってここで雨天のレースが出来るのかということです。なぜ運営側は今日の午前にテストを行わなかったのでしょうか?今日は雨になるとわかっていたと思うんですが。」

ロリス・カピロッシ

「あなたにとってはそういう風に全てを運営管理するのは簡単かもしれませんが、皆を集めたりというのはそうは簡単なことではないんですよ。」

Q

「いやいや、昨日の夜にわかっていたことでしょう。昨日のこの時点では皆がここにいたじゃないですか。簡単だったはずですよ。」

ロリス・カピロッシ

「確かに昨日の午前1時に雨が降っているというのはわかっていました。ただ朝に集まってきた皆に、風が強いから乾くだろうというような話をして、200人を一気に動かすなんていうのは簡単じゃないですよ。」

Q

「いやいや計画をするのは簡単でしょう。昨日の時点で雨が降っていたわけですから、それに皆ここにいたじゃないですか。」(※別のジャーナリストが)”午前2時くらいまでいたよな?”「明日の朝9時に雨が降っていたとしたら、皆テストを行うという決定をするのは簡単だったはずですよ。」

ロリス・カピロッシ

「正直毎日新しい事を発見しているんですよ。もし今日が雨であればトラックにかなりの水が出ることはわかっていましたし、それにここまでトラックに水が残っている状態では、日中であろうが夜であろうが走行する意味はありません。この状況で走行するのはあまりにも危険過ぎます。ですから明日の朝あまりにも雨が多いようであれば、ライダーを走らせたいとは思いません。自分達にとって最も重要なのは安全なんです。安全性が確保出来るのであれば(ライダーにテストしてもらう)そういうことも出来ますが、安全性が確保出来ないのであればそんなことはしません。」

 

Q

「トラックで最も最悪な状態のところは、路面に出来ている川なのか、また別のどこかなのでしょうか?明日の朝はこういった部分に対して対策をするのか、何かしら問題を避けるようにするのかどうでしょう?」

ロリス・カピロッシ

「最悪なのはターン1のブレーキングポイントです。あとはターン3、ターン4、ターン10です。今晩作業しているのはポンプで地中の水を吸い出しているということで、明日朝に雨が降ったとしたら、その半分の仕事を今していることになりますが、とにかく一晩中作業を続けます。とにかくこうした作業を続けます。というのも他にやるべき作業がない状態なんです。」

 

Q

「明日もしライダー達が夜間にライトの下で出走出来たとして、その状況ではやはりライディングが厳しいという判断となった場合、将来的には日中にレースを行うという形に戻すということも考えられますか?それとも再度リスケジュールするのでしょうか?」

ロリス・カピロッシ

「まず第一にライダーの考えを尊重したいと思います。もしライダー達がウェット路面でこうしたライトのもとでレースが出来ないという判断になれば、日中にレースを行うことも含めて検討しますが、現状ではまだわかりません。」

 

Q

「ダニ・ペドロサに聞いた所、ウェット路面にライトが反射した状態の写真を見て、走行は厳しいというような話があったんですが、22台のバイクが一緒に走る事を考えるとやはり難しいと思いますか?(※正確にはグリッドは23台です。)」

ロリス・カピロッシ

「ですから、まず最初に私の意見よりも、ライダーの意見を全て聞きたいと言ったんです。ライダー達が不可能だという結論になればそれに同意します。誰かを説得しようとは思っていません。」

 

Q

「カタールサーキット側に排水性向上ための改善を要請する考えは?」

ロリス・カピロッシ

「ええ100%間違いありません。既にサーキットとともに話し合いを進めています。まだ結論は出ていませんが、これは最優先事項です。」

 

Q

「誰かが言っていたんですが、Moto3ライダー達が18時15分にトラックに出走するのでしょうか?これが1つ目の質問です。もう1つは、ライダー達がトラックでの走行が不可能だと判断した後は検討するという話でしたが、なぜ彼らがそういう判断をするまで待っているのでしょう?私が言いたいのは、なぜAプラン、Bプラン、Cプランという形で用意をしていないのでしょうか?

ロリス・カピロッシ

「というのも、レースウィークの中では異なるタイムスケジュールを作るのが難しいからです。というのも天候の事は読めませんし、何が起こるかはわからないですからね。天気予報によってプランを考えようとしても、思ったようにはいかないものですからね。というのも3日前まで、レースを雨の中行うというのはプランに無かったんです。レースが可能かどうか理解しようとしましたし、ミシュランにテストを行うためにレインタイヤを持ち込むように依頼もしました。まずはテストが必要なんです。いきなり雨の中でレースをするということはありません。もし明日の夜に少しだけの雨であった場合、ライダー達にテストしてもらい、ライダーが”これならレースは出来る”ということであれば、さらに20分のテスト時間を与え、それでレースが出来るんです。Moto3ライダーを送り出すというのはいつだと聞いたんですか?」

 

Q

「私が聞いたのはMoto3ライダー達が18時ごろにトラックに出てテストをするようにと頼まれたいうことです。」

ロリス・カピロッシ

「それは私は知りませんね。」

 

Q

「もし明日のレース開催の可能性がなければ月曜のレースもあり得るのでしょうか?それともアルゼンチンは日程的に接近し過ぎていると言えるでしょうか?」

ロリス・カピロッシ

「明日が今日のように最悪の天候であれば、そういうオプションもありです。ただ現状はあくまでオプションですね。」

 

Q

「明日の2つの問題は排水性と、ライダーがライトの中でウェット路面で走行することですが、こうしたことから明日の午後3時にレースをするという可能性はありませんか?」

ロリス・カピロッシ

明日の午後3時にも雨が降っていたとしたら、レースをするかしないかはわかりません。というのもこれは雨の強さにもよるからです。何が起こるかによってプランが全く変わってしまうんです。雨が11時まで続くかもしれませんし、そうなったら午後2時とか3時にはトラックは走行出来る状態ではありません。待ったほうが良いでしょう。妙な状況だと言えますよね。カタールにいてこんな天候なんですから。通常のプランでは運営出来ませんから、全てのクラスに余分に10分の練習時間を与え、どうなるかを明日の夜に見ましょう。」

 

Q

「カタールで雨が降るのは珍しいですが初めてのことではありません。ということは排水性が問題になる可能性もあったと思うんですが、なぜこれが今まで問題にならなかったのでしょう?

ロリス・カピロッシ

「というのもここまでの大雨というのはあまり見たことがありませんからね。2009年にも激しい雨がありましたが、1時間ほど雨が止んで、そこでトラック上に残った水に関して問題は発生しませんでした。ですから今までこうした問題があることに気づかなかったのです。今日になってこうした問題の大きさがわかり、解決に向けて動いているんです。」

 

Q

「こうした状況について批判をするのは簡単だと思うんですが、来年に関してはこうした状況であればライダーにウェット路面でテストをしてもらい判断をということでしたが、今年は今まさにこうした状況が起きているわけで、ライダーにテストを依頼するのでしょうか?こうした状況は防げたと思いますか?」

ロリス・カピロッシ

「ただライダーにテストしてもらうには路面が乾いている(完全にウェットではないということかと)必要があります。現状は80%の路面が乾いていて路面に川が出来ているような状態ですから、ライダーにテストしてもらうような状況ではありません。路面がところどころ乾いたり濡れたりしていては意味がないんです。排水性の向上、新しい路面、こうした事が出来てから、またしっかりと運営が出来るわけです。排水性が良くなれば大雨でもレースが出来るかもしれませんしね。これもライダーがOKと言えばの話ですが。」

 

Q

「ちょっとした技術的な話ですが、ここであなたがトラックテストをした際は、反射の問題を避けるためにスモークバイザーをしてテストをしたんでしょうか?」

ロリス・カピロッシ

「いいえ。今回もそうですし、過去にカタールでレースをしていた時もそうですが、常にクリアバイザーを使用していました。」

 

ニック・ハリス

「ロリスありがとうございました。」