テック3のボス、エルヴェ・ポンシャラルは、ヤマハからKTMへの移籍の裏側、そしてパドック内でもずば抜けた知識と経験を持つギー・クーロンのようなテクニシャンにとっても、KTMの最新型のファクトリーマシンの開発プロセスに関われるという魅力があったと語ります。

エルヴェ・ポンシャラル

「私は仕事が好きですし、この仕事即ち人生です。そして価値観を同じくする多くの人を率いています。ヤマハ以前はHRCに所属していたわけですが、98年にヤマハからコンタクトをもらいました。ただその時点でヤマハの250ccがいかに速くても、その後250ccs 2ストロークはなくなるわけですから、その速さは全く気にしませんでした。しかし面白いチャレンジだと思ったのでHRCを去ったんです。」

人生においてはずっと繰り替えされる物事というのは、徐々にその新鮮さを失っていきますよね。そして私はワクワクするエキサイティングな挑戦が好きなんです。2016年、2017年は本当に語るべきことが多くあってバレンティーノは自らのチームを発足させましたし、ヤマハは将来的にサテライトチーム2つをあわせて6台のバイクを供給は出来ないことはわかっていました。」

「ですからその後何がヤマハの内部で起こるかを見ていたんです。HRCがカルをファクトリー体勢でサポートしているのを見るのは気持ちが良いですし、Ducatiが今年ペトルッチ、Pramacチームに対してファクトリーバイクでしっかりとコミットしてサポートをしていたのも素晴らしいことだと思います。結果的にPramacは独立チームチャンピオンシップで優勝、そして独立チームライダータイトルも獲得しました。」

「今年ザルコはカル、ペトルッチと独立チームチャンピオンシップを戦っていて、ライバルを見ていると自分達もホンダやDucatiのようにサポートを受けたいと思ったんですよね。ですから私はそういった状況でヤマハの動きを待っていたんです。そうしたところKTMからコンタクトがあったんです。

「私はテック3が何をもたらすことが出来るかなどを話し、KTMは4台の最新型バイクを走らせるつもりだと教えてくれました。そうして話を進める中で、いかにバイラーが本気で情熱を持っているかを理解し、KTMと一緒に仕事をしたいと思ったんです。私はKTMの経営陣に自分達の価値を説明し、それで、”よし、やろう”ということになったんです。」


「アンドレアもテック3にいたんですが、彼は”ヤマハのバイクはライディングスタイルに合う。このチーム、バイクでやっていきたいと話していました。ですから彼が今こうしてDucatiで活躍しているのを見るのは本当に嬉しいんです。今やデスモセディチはグリッドで最強のバイクですが、これはジジ・ダッリーニャによる部分が大きいですが、ドヴィツィオーゾの貢献も大きいですよ。」

「個人的にドヴィツィオーゾとザルコは似ていると思っていて、彼らはスーパースターのようには振る舞わず、自分をサポートしてくれるチームを作るのが上手です。自分のサポーターを作るのが上手なんですよ。ザルコもドヴィツィオーゾ同様にKTMの中で彼をサポートする人々を作り上げることが出来ると思いますよ。

「ザルコはハードワーカーですし、テクニックもあります。トラックで何が起きているか理解する力があり、チームに技術的なフィードバックもすることが出来ます。ポルとかなりライディングスタイルが異なりますが、KTMが必要としているのはより多くのインプットです。そしてこれらが2019年にもたらされるんです。ポルと一緒にKTMをトップに導くことが出来るでしょう。

KTMには資金、エンジニア、情熱があります。彼らに必要なのは後少しの時間と人です。人というのはライダーとエンジニアです。ギー・クーロン、ニコラス・ゴヨンには素晴らしい経験があり、KTMの開発を間違いなく加速出来るでしょうし、KTMと共に成長するのが我々のターゲットなんです。」

ギー・クーロンはパドック内でも数少ない、モーターサイクルレーシングの世界に生きている男です。そして彼は非常に忠誠心が強いんです。20年前HRCを去った時、彼はそこまで乗り気ではありませんでした。そしてその後ヤマハの組織の中で彼も快適さを感じていて、ヤマハと袂を分かつとは彼も思っていなかったでしょう。」

「テック3では基本的に私が意思決定をして彼はついてきてくれるんです。そこでKTMに決める前に、彼に”KTMのバイクを使おうと思う、素晴らしいチャレンジだし、今がその時だと思うと言いました。彼は反対すると思ったんですが、彼は”よしKTMにしよう”と言ったんです。ギーも挑戦が好きです。結局サテライトチームというのは、メーカーからリースしている車両の面倒を見るだけなんです。ただ、ギーのような人間にとっては、バイクの開発の方向性を決めるミーティングに参加したり、プロジェクトの一員でありたいわけなんです。

ライダーというのはこういったプロセスに関わりたいものですけど、これはトップテクニシャンも同じなんですよ。全く異なるバイクで全く異なるシャーシ構成ですが、ギーはこういった挑戦が好きなんです。プレッシャーに負けて他のMotoGPバイクのレプリカになるのではなく独自の方向を進んでいるんです。ピーラーCEOが言うようにKTMの強みを生かしてそれで競争力を発揮して勝利したいんです。

(Photo courtesy of michelin)