ドイツ軍が使用していたケッテンクラートについては、なんとなく知っている方もいるでしょうし、ミリタリー好きの方なら間違いなく知っている車両でしょう。バイクに分類して良いのかどうか微妙な車両ですが、Bonhamsのオークションにフルレストア車が出品されるとのこと。

ドイツ軍によって設計されたSdKfz 2は、Kettenkrad(ケッテンクラート)としてより良く知られている。これは東部戦線や北アフリカの砂漠で非常に良く利用された無限軌道のモーターサイクルだ。そしてこの車両は、第二次世界大戦時の最も移動速度の速い無限軌道車両として知られている。

SdKfz 2ケッテンクラートの話

80km/hというトップスピードはあまり大した事が無いように思えるかもしれない。だが、どれだけスムーズな路面で走ったとしても、歯がゆるくなるほどの振動を発生する。実際、ドイツ国防軍は70km/hを制限速度としていた。SdKfz 2ケッテンクラートは元々は早期展開出来るようにユンカースJu 52輸送機に収まるように設計された。ただ、明らかな理由によってパラシュートでの展開は行われなかった。


その他の無限軌道車両と比較すると羽のように軽いとは言え、バイクとして考えると軽くはなかったのだ。ドイツ軍はケッテンクラートを糖蜜のようなロシアの泥、もしくはサハラ砂漠の砂の上での兵員輸送の手段として使用した。その他には銃の輸送、ケーブル敷設、ドイツ空軍の牽引車両として使用した。通常はメッサーシュミット Me262、たまにアラドAr234の牽引に使用された。空軍による使用は、戦争後期に航空燃料が少なくなってくるとより一般的になった。ケッテンクラートは航空機をランウェイまで引いていくのに使用され、誘導路で飛行機が燃料を浪費するということを少なくした。


設計者達は1478ccの水冷直列4気筒エンジンをオペルOlympiaから使用。これによって使用パーツを簡素化し、メカニックに必要なトレーニングも最小限で済んだ。また元々生産しているエンジンであったために、新たに生産のための準備が必要無かったのだ。馬力は36馬力でオペルのエンジンは3速トランスミッションとフットクラッチ、スティックシフトという構成だった。これは高速、低速レンジの切り替えが付いていた。つまり合計すると6速となる。低速レンジの場合、ケッテンクラートは24°の砂地も登ることが出来たという。


ケッテンクラートについて良く聞かれる内容はステアリングについてだ。このバイクのフロントは方向を変える上で特に意味が無いように思える。しかし、これが驚くほどに有効なのだ。ハンドルバーをロックポジションまで持っていき、片側の無限軌道の速度を落とすことで、厚い泥、砂の上でもタイトな方向転換が可能となる。いくつかのケッテンクラートは前輪を取り払ったものもあり、そうした車両は無限軌道の片側のブレーキだけで旋回する。(※構造上超信地旋回は出来ないようです。)


生産が終わる1944年までには8,345台が製造された。戦後、武装を解く中でほとんどの車両はスクラップとなった。残った数台はコレクターによって収集され、一体何台のケッテンクラートが現代まで生き残っているのかについては定かでは無い。

この車両について

今回撮影に使用しているSdKfz 2ケッテンクラートは、1944年の最終生産型だ。この個体については少しの歴史があるが、戦後ドイツ森林委員会によって使用されていた。この車両はベルギーのオーナーからレストアプロジェクトで買い取られ、2011年から2015年にかけて、ボルト1本に至るまで交換を受けている。エンジンはフルレストアされ、ギアボックスを含めドライブトレイン、ディファレンシャル、ファイナルドライブもリビルドされている。


レストアには多額の費用がかかり、オリジナルの6ボルト仕様に関する写真を含め250枚を超える写真が撮影された。なお、レストアには合計で10時間がかかっている。この車両は5月19日にBonhamsのオークションに出品が予定されており、その想定落札価格は60,000〜80,000ポンド(約845万〜1126万)だ。もし興味があって、競りに参加したい場合はこちらから

[blogcard url=”https://silodrome.com/sdkfz-2-kettenkrad/”]

[blogcard url=”https://www.bonhams.com/auctions/24118/lot/66/?category=list&length=100&page=1″]