ディオゴ・モレイラのMotoGP昇格が現実味を帯びてきた。2024年からのMoto2での急成長、2025年シーズンのタイトル争い、そして2026年からのブラジルGP開催計画――あらゆる要素が、ブラジル人ライダーのトップクラス昇格を後押ししている。メーカー間の争奪戦は加熱しており、MotoGPの未来を左右する大きな転換点に差し掛かっている。

2024〜2025年:急成長の2年で表彰台常連に定着

モレイラは2024年にMT Helmets – MSIからMoto2デビュー。開幕戦からトップ5を争い、第2戦アルゼンチンで初表彰台を獲得。その後も日本GPやマレーシアGPなど難しいコンディションでも安定した走りを見せ、ルーキーながら年間ランキング8位でフィニッシュ。その成熟度の高さに多くの関係者が驚かされた。

2025年はタイトル候補の一角として開幕を迎えると、第2戦ポルトガルで初優勝。アメリカズ、ムジェロ、ザクセンリンクでも表彰台に登り、シーズン中盤終了時点でランキング3位につけている。タイヤマネジメント、スタートの安定性、レース中の判断力など、すべての面で“完成された若手”という評価を確立した。

マルケスがドゥカティに推薦、ホンダ・ヤマハ・アプリリアも獲得を狙う

モレイラのパフォーマンスに最も強く反応したのがマルク・マルケスだ。イタリアのSkyによれば、マルケスはドゥカティ首脳陣に対し、「モレイラに即座にシートを用意すべき」と進言している。ドゥカティ内でマルケスの発言力は極めて大きく、実際に内部では本格的な検討が始まっているという。

ただし、現状で2026年のドゥカティ機に空席があるのはVR46チームの1枠のみ。現在のライダーであるフランコ・モルビデリは残留の方向とされており、モレイラに席を用意するには体制変更が必要となる。

ホンダはすでに3年契約を提示しており、LCRからスタートし、ファクトリーチームに昇格させるプランを描いている。年俸は150万ユーロとされ、即戦力としての期待が高い。また、ヤマハはトレーニングバイクの供給を通じて継続的に支援しており、トラックハウス・アプリリアも水面下で動いている。

2026年ブラジルGP復活

モレイラの昇格にとって最大の追い風となっているのが、2026年からのMotoGPブラジルGP復活だ。MotoGPとしては2004年以来、実に22年ぶりのブラジル開催となる。ドルナCEOカルメロ・エスペレータは2024年のインタビューで次のように語っている。

カルメロ・エスペレータ(ドルナCEO)(2024年)
「我々は南米、特にブラジルを極めて重要なマーケットと見ており、グランプリ開催の復活を目指している。現地での関心とファン層の再構築には、ブラジル人ライダーのMotoGP参戦が不可欠だ。」

この発言は、モレイラの昇格がスポーツ的だけでなく商業的にも極めて理にかなう判断であることを示している。南米市場の再開拓、現地スポンサーの呼び込み、視聴率の拡大――モレイラの存在はそれらすべての要件を満たす。

モレイラ(過去インタビューより)
「自分はこれまで常に準備をしてきました。Moto2での経験は非常に大きく、どんなチャンスが来ても対応できるよう努力しています。自分にとって、ブラジルを代表してMotoGPに挑戦できることは大きな誇りです。」

昇格発表は夏休み中か、MotoGPの勢力図を左右する重大決定へ

すべての流れがディオゴ・モレイラのMotoGP昇格に向かっている。残る障害は「どの陣営が彼に席を用意できるか」だけだ。スポーツ面、政治面、商業面、そしてファン層の期待――そのすべてが交錯する中、ブラジル期待の星がどのマシンで2026年のリオGPを迎えるのかに、世界中が注目している。