トップメーカーとの最後の1秒の差を埋めるのは大変だった

モータースポーツマネージャー ピット・バイラー

「KTMはRC16を1から作り、出来上がったバイクはフロントランナー達から3.5秒遅かったんです。そこから2秒間タイムを短縮するのは簡単でしたが、そこから信頼性を確保しつつ1秒縮めていくのは至難の技でした。2019年は大きく前進出来ましたから、パフォーマンスには満足しています。しかしライディングが難しいバイクであることは変わらず、序盤は全てのレースで何かしら新しいパーツを持ち込んでいました。そしてこれを2年続けたんです。」
「しかし2020年のバイクの開発を行うため、3年目はこうしたニューパーツの投入をやめねばならないとわかっていました。シーズンの途中で来シーズンのバイクを作り始めるというのは、常に難しいものなんです。そしてライダー達の感覚が研ぎ澄まされている11月に、この新型バイクのテストを行うことが重要なんです。」
ダニ・ペドロサ

RC16はダニ・ペドロサ、ミカ・カリオと共に作り上げた

KTMはこのバイクをダニ・ペドロサ、ミカ・カリオと共に作りました。ミカがこのバイクのそもそもの性格を作りあげ、ダニが少し違う方向に開発を動かしました。エンジニア達は彼から本当に多くのことを学習したんです。もちろん他のライバルメーカーのことも参考にしてはいますが、KTMは独自構造のシャーシ、WPのサスペンション、オリジナルのエンジンを使用しています。

「他のバイクをコピーすることは出来ませんから、全てを自分達で学習しながら進める必要がありました。前に進む中で経験は増し、経験を詰めたバッグは常に膨らんだ状態で旅をしてきました。ですからブラッド・ビンダーが勝利を遂げた2020年型のRC16は、完全にロジカルに開発されたバイクなんです。」

テストを続ける中で間違いなく素晴らしい性能だということがわかっていましたが、忌々しいコロナのせいでそれを披露することが出来ませんでした。カタールでも素晴らしい結果を発揮出来たと確信していますが、再び経営陣からライダー達までを奮い立たせる必要があったのです。」

自分達のバイクに信頼を置けないのなら成功は出来ない

100人を超えるレース部門を率いながら、自分達が使用するバイクの構造に絶対的な信頼を置けないのなら成功は出来ません。KTMはいかにスチールトレリスフレームでバイクを作り上げるかを知っています。それこそがKTMのノウハウなのです。スチールはアルミの3倍の強度があり、アルミよりも小さく軽いフレームを作ることが可能です。」
ブラッド・ビンダー
そしてKTMはライダーが求めるフレームのしなりをスチールフレームでどのように与えることが出来るかを理解しています。ライダーにとってはフィーリングを与えてくれるフレームであれば、それがスチールでもアルミでも構わないわけです。

ポル・エスパルガロ

ポル・エスパルガロはKTM初優勝にふさわしいライダーだった

「ポル・エスパルガロはKTMのプロジェクトの中でライオンのように戦ってくれました。彼はKTMのプロジェクトの一員ですし、彼こそがKTMの初優勝にふさわしいライダーだったと言えるでしょう。しかしメーカーのKTMとしては、ルーキーズカップで見つけ、Moto3、Moto2と共に戦ってきたブラッド・ビンダーが優勝したというのは最高の結果です。」

「オフロードの場合、若い才能あるライダーを見つけKTMファミリーに引き入れた後、彼らが選手権で優勝した以降は、彼らがKTMから離れていくことはほとんどありません。しかしロードレースの場合、KTMの若手ライダーが勝ち続けたいと願う限り、Moto3で勝った後は勝てるMoto2チームに引き抜かれてしまう状況だったんです。」
ポル・エスパルガロ

コンセッションを失うことは問題ない

「今後コンセッション(優遇措置)を失うことに関しては、ちょうどブルノで優勝した後にそのことについて考えていました。いつコンセッションがなくなったとしても問題はありません。コンセッションがなくなるというのは、バイクが既に素晴らしい性能を発揮出来るという意味ですからね。」

「最初は新参者のメーカーということでコンセッションの適用を受けましたが、既にコンセッションが不要と言える実力はつきました。もし今すぐコンセッションがなくなる契約書があるのなら喜んでサインしますよ。だって、それはさらに表彰台を獲得出来るってことでしょう?」
ブラッド・ビンダーブラッド・ビンダー

(Source: KTM)

(Photo courtesy of michelin)

[blogcard url=”https://kininarubikenews.com/archives/45096″]