今週末Ducatiのパドックに戻ってきたケーシー・ストーナー。早速ジャック・ミラーは来年是非ライダーコーチに就任して欲しいとラブコールをしている状況だ。体調は少し安定してきたようだが、バレンティーノ・ロッシについて、レースについて、ケーシー節は健在。
ケーシー・ストーナー「レースが懐かしいという感覚はない」[adchord]

パドックに戻ってきたのは3年半ぶり

ケーシー・ストーナー

健康的にかなり厳しい状況が続いていたんですが、昨年の12月くらいから上手に付き合えるようになってきました。今でも完全に疲れてしまう日もあれば、そうでない日もあり、説明が難しいですね。パドックに戻ったのは3年半ぶりですか。前回は2018年のムジェロだったかと思います。多くの懐かしい顔がいますから懐かしいかったですね。オーストラリアの国境規制が緩和されたので、こうしてパドックに戻ってこれたわけです。」

2021年は多くの選手が表彰台を獲得していてバラエティーに富んでいました。過去2年間、そして特に今年はチャンピオンシップの優勝候補不在のシーズンだったと思います。予想していた選手が沈んでいったり、まったく予想外の選手がスピードを発揮したりという状況でした。パドックの外から見ていて楽しいシーズンでしたけど、もう少しコンスタント差を発揮してくれると思っていたライダーもいくつかいましたね。」

Ducatiライダーはもっとコンスタントさを発揮出来るようにすべき

Ducati自体は高い戦闘力を発揮していると思いますが、戦闘力を発揮するライダーがトラックによって異なっていたり、コンスタントさに欠ける状況でした。これはライダー、バイク共に改善が必要です。これはどのメーカーにも言えることですが、Ducatiについても得意なトラックと苦手なトラックがあります。もう少しコンスタントに成績を発揮出来るようにして、特定の状況で安定した成績を残せるようにすることが必要でしょう。
ケーシー・ストーナー「レースが懐かしいという感覚はない」
「今年ヤマハは、いつもどおりに素晴らしいパッケージを提供しているようですが、ヤマハにとっては様々な分野のレースで今年は良い1年になっていますね。ヤマハのパッケージの完成度の高さは本当に打ち負かすのが難しいですよね。」

レースが懐かしいとは全く思わない

正直レースが懐かしいという感覚はほとんでありません。自分は完璧主義者なので失敗が何より嫌なんです。ですから、そういったメンタリティーで挑むレースというのは非常に厳しいものなんです。懐かしさを感じるとすると予選ですね。予選や練習走行は次の走行でさらに改善を目指して積み上げていくものですから楽しかったですね。レースでは燃料のこと、タイヤの事を常に考えながらの走行ですしね。」
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バレンティーノが未だにレースを楽しめていることは彼にとっては素晴らしいことです。自分にとってレースをすることは優勝することでしたら、未だに勝てなかったレースの事を思い出して納得がいかないくらいなんです。自分が戦闘力を発揮出来ずに走り続けることに我慢出来なかったんです。」

ロッシからは多くを学んだ

バレンティーノにはフロントで走っていて欲しいですし、彼が優勝争いに絡んでいたら、本当に現在のレースも楽しいものになっているだろうなと思います。バレンティーノとは現役時代素晴らしいバトルが出来ました。自分の思うようになったこともあればそうでないこともありました。」
ケーシー・ストーナー「レースが懐かしいという感覚はない」
「バレンティーノ・ロッシと共にレースをしてきた事は大きな財産です。トラックの中、外を問わずに、メディアの扱いかた、使い方含めて多くを学びました。彼は常に状況について精通していて、賢くて狡猾でした。ですから多くを学ばざるを得ない状況にありました。そんな彼を相手にタイトルを獲得したことで、自分のライダーとしての価値もしっかりと認識されたと思っています。

「長年レースをしていると引退のタイミングが見つかりにくいものですが、バレンティーノの引退については驚きませんでした。娘が生まれるということと引退するということが自然に結びついていると思いますから不思議ではなかったですね。彼の人生にとって新しい幕開けになるのは間違いありませんし、素晴らしいニュースですよね。」

バイクの乗り換えに苦戦したことはない

「後進の教育をしたいという気持ち、パドックに戻ってきたい気持ちはありますが、やるのであればしっかりとやりたいと思っています。しかし家族がオーストラリアにいる状況で旅をして回るのは簡単ではありません。自分だからこそ出来ることはあると思っていますが、妻とも話し合う必要があります。自分がキャリアを通じて学習したことを、もっと前に知ることが出来ていたらと思いますしね。」

多くのライダーがバイクの乗り換えに苦戦しますが、自分は比較的苦戦せずにスピードを発揮することが出来ました。他のライダー達と自分が異なる点は、自分はバイクに合わせることが苦ではないということでしょう。皆口々に”自分のライディングに合わない” “バイクが言うことを聞かない”といった事を言いますが、どのバイクにも得意とする部分があり苦手とする部分があります。」
ケーシー・ストーナー「レースが懐かしいという感覚はない」
「ですから、常に自分がどう乗りたいかと、バイクがどう乗って欲しいのかの妥協点の探り合いなんですよ。自分の場合は、全てが自分の思い通りに動いて欲しいというプライドはなく、バイクが望むように走らせることが出来たということだと思います。常にバイクの声を聞きながら走ってきましたし、クリスチャンもそういった方向で自分を本当に良く助けてくれました。

ホンダはブレーキングに重きを置きすぎた印象がある

ホンダとマルクのクルーが犯した初期の過ちは、ブレーキングにあまりに重きをおいたバイクを作ってしまったことでしょう。以前テストした時に感じたことですが、ブレーキングとブレーキング時の安定感に特化しすぎている印象がありました。どのバイクもあらゆる面で性能を発揮する事は難しく、1つ飛び抜けた性能を持つエリアがあるという事は重大な欠点があるということでもあるんです。

「そのせいでホンダのバイクは旋回性に問題を抱えていました。マルクはその部分をうまくごまかして乗ることが出来るライダーですが、2015年か2016年に以前のシャーシを試して旋回性の改善を探っていた時期がありましたよね。しかしあくまでこれは外から見た意見です。」

「自分がDucatiで走っている時も、優勝出来るパッケージでフロントを走行出来ていましたが、他のライダーは皆苦戦していました。ですから今のホンダの状況のどこに問題があるのかを語るのは非常に難しいことです。」

パドックのバイクについて最も興味があるのはヤマハのM1です。Ducati時代にしてもホンダ時代にしても、最も苦戦した相手ですから、そのバイクに乗った時に何を感じるか興味があります。レースをしている時にライバルとして感じたこと、自分が仮にヤマハに乗った時に何を感じるか興味深いと思いますね。」

(Photo courtesy of Ducati)