王者マルティン、移籍初年度で離脱検討か
2024年にMotoGP王者となったホルヘ・マルティンが、移籍初年度からアプリリア離脱を検討していると言われている。マルティンは2025年からアプリリアに加入。チャンピオンナンバー「#1」を背負い、マーベリック・ビニャーレスやアレイシ・エスパルガロの後任として新体制を担うはずだった。しかし、プレシーズンで転倒負傷。さらに第4戦のカタールGPでは大クラッシュに見舞われ、肋骨を骨折。肺にもダメージを負い、具体的な復帰時期は未定だ。

離脱のカギは「成績条項」
アプリリア離脱の直接的な理由となるのは、彼の契約に含まれていた「成績条項」にある。この条項は2025年フランスGP(第5戦終了)時点でマルティンがチャンピオンシップ上位にいなければ、翌年2026年の契約を解除できるという内容。あくまでアプリリア側ではなく、マルティン側に解除権があるとされている。
実際には彼が参戦できたのは第4戦のみ。そのうえ、そのレースでの転倒により再度戦線離脱となり、ランキングは最下位のまま。条項の条件は“形式的”に成立し、マルティンには契約を解除する権利が発生している。
すでに契約解除の意向か?
一部報道では、マルティンがチームに対し契約解除の意向を伝えたとも報じられている。アプリリア側はこの件にノーコメントを貫いているが、チーム幹部は法的措置も視野に入れつつ契約履行を主張する構えのようだ。
ただし、マルティン側は「完全な決別」には慎重で、復帰後数戦でアプリリアが競争力を示せれば、残留の可能性もゼロではないとされている。
苦しむアプリリアの現状
しかし、ホルヘ・マルティンを欠くアプリリアは今季ここまで表彰台ゼロ、コンストラクターズランキング最下位。開幕戦に小椋 藍が獲得した5位が唯一の好成績で、チームメイトのマルコ・ベッツェッキは、2024年に見せたVR46での勢いが完全に失われており、アプリリアのマシン特性に適応しきれていない印象が強い。ブレーキングやトラクション面での不満をたびたび口にしており、レースウィークを通じてリズムを掴めないまま終わることが多い。
また経験豊富なアレイシ・エスパルガロが離脱し、アプリリアを知るライダーがフェルナンデスのみという状況もあり、マシン開発が他のメーカーほどに進んでいない印象は受ける。実際問題としてフランスGPを消化した状況で、スプリントレース、決勝レースはおろか、各セッションにおいてもアプリリアのバイクがスピードを発揮していた印象は薄い。
浮上するホンダの存在
マルティンのアプリリア離脱は確実な情報ではないが、もし2025年末でマルティンがフリーとなると、目をつけるであろうチームがホンダだ。ホンダはルカ・マリーニとの契約が2025年末で終了するが、現状で成績を残しているのはヨハン・ザルコのみ。ジョアン・ミルは速さを見せる場面もあるが、完走率に課題を抱えており、2026年末まで契約が残っている。このルカ・マリーニの枠にホルヘ・マルティンを迎え入れたいとホンダが考えていても不思議ではない。
鍵を握るエスパルガロの存在
2024年末にMotoGPライダーを引退し、ホンダのテストライダーとして活躍するアレイシ・エスパルガロが、アプリリアにマルティンを迎え入れるパイプ役となったのは記憶に新しい。今度は逆に、マルティンの次なる移籍先の判断において、エスパルガロが何らかの役割を担う可能性もある。
マルティンに残された選択肢は?
なお、2026年からの契約に関して現時点でヤマハ、KTM、ドゥカティにはマルティンの受け入れ枠がない。 ヤマハは2025年からプラマックを傘下に迎える再建フェーズにあり、ファクトリーシートは埋まっている。なお、KTMもライダーは固定済みで、ドゥカティはマルケス、バニャイア体制で固められている。つまりファクトリーチームへの実質的な移籍先はHRC(ホンダ)のみとなっている。
今後を左右するのはアプリリアの“真価”
ホルヘ・マルティンの行方を左右するのは、今後数戦でアプリリアが“トップ争い出来るバイク”を示せるかどうか。
その成否が、マルティンの進路を決定づけることになるかもしれない。