グレシーニ・レーシング代表ナディア・パドヴァーニの元で、才能を開花させた2人と、かつての輝きを取り戻した1人が、ついに表彰台で再会を果たした。エネア・バスティアニーニ、アレックス・マルケス、そしてマルク・マルケス――それぞれがナディアの下でキャリアの節目を迎え、今回のカタルニアGPでその成果を結果として示した。

アレックス・マルケス(BK8 グレシーニ・レーシング MotoGP)は、昨日の転倒を振り切ってモンスターエナジー・カタルニアGPで兄マルク・マルケス(ドゥカティ・レノボ・チーム)との直接対決を制し、バルセロナの地で劇的な勝利を飾った。スプリントでの転倒という悪夢から一転、フルレースで見事なリカバリーを果たし、自身にとってMotoGP通算2勝目を挙げた。3位にはエネア・バスティアニーニ(レッドブルKTMテック3)が入り、KTM移籍後初となる日曜表彰台を獲得した。

レース序盤:マルクがリードを奪う

ポールスタートのマルク・マルケスは、ターン1でアレックスを抑えてホールショットを奪取。3番グリッドから好スタートを決めたペドロ・アコスタ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が3番手につけ、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハ)は4位、バスティアニーニが5位で続いた。

2周目のターン1では波乱が発生。マルコ・ベッツェッキ(アプリリア・レーシング)がフランコ・モルビデリ(プルタミナ・エンデューロVR46)と接触し転倒。直後にファビオ・ディ・ジャンアントニオ(同VR46)もこれを避けきれず転倒。両者とも怪我はなかったが、表彰台争いから脱落する形となった。

逆転のアレックス、首位に浮上

4周目、アレックス・マルケスがターン1でクラシックなオーバーテイクを決め、兄をパスしてトップに浮上。アコスタとバスティアニーニもマルクを追う展開に。後方ではルカ・マリーニ(ホンダHRCカストロール)とヨハン・ザルコ(同カストロール・ホンダLCR)がクアルタラロに迫るも、5位争いは混戦状態に。7周目にはブラッド・ビンダー(KTM)がターン7で転倒しリタイア。22番グリッドからのスタートとなったフランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ)は着実に順位を上げ、8周目には8位まで浮上。

エネア・バスティアニーニがアコスタを抜いて3位に

10周目には上位4台が5位グループから2.1秒の差を築く。ここでバスティアニーニがアコスタを交わし3位に浮上。マルクとの差は0.8秒。ここからバスティアニーニの追撃が始まる。11周目、ザルコがターン10で転倒。これによりマリーニが5位に昇格。レース中盤、アレックスはリードを維持しながらも、最速ラップを連発するバスティアニーニが0.5秒差に迫る。しかし14周目にはアコスタが1秒以上遅れ、リアのソフトタイヤが限界を迎えている様子。以降アコスタは急激にペースを落とし、表彰台争いから脱落。

マルケス兄弟対決

19周目、兄弟対決の様相が濃くなる中、マルクが2度小さなミスを犯し、アレックスのリードは0.8秒に拡大。20周目にはその差が1秒超え、終盤にかけてアレックスが主導権を掌握。最終ラップ、かつてスプリントでクラッシュを喫したターン10も無事通過。アレックス・マルケスは1.7秒のリードでチェッカーを受け、バルセロナで歓喜の初日曜勝利を飾った。兄マルクは連勝こそストップしたが、母国での2位に満足の表情。マルケス兄弟による1-2フィニッシュが実現した。

4位には後半失速したアコスタ、5位にクアルタラロが入り、6位には終盤見事な追い上げを見せた小椋藍(トラックハウスMotoGP)が今季初のトップ6フィニッシュを達成。バニャイアは7位と健闘し、マリーニが8位。ヤマハにとってはミゲル・オリベイラ(プラマック・ヤマハ)の9位も収穫と言える。

10位にはジョルヘ・マルティン(アプリリア・レーシング)が入り、以降はラウル・フェルナンデス(トラックハウス)、ジョアン・ミル(ホンダHRCカストロール)、マーベリック・ビニャーレス(KTMテック3)、ジャック・ミラー(プラマック・ヤマハ)、そしてフェルミン・アルデゲル(BK8 グレシーニ)がポイントを獲得した。

アレックス・マルケス

「本当に嬉しいです。昨日のレースのことがまだ頭にありますが、今日は自分のレースにしようと思っていました。レース全体でタイヤを温存して、残り6,7周でプッシュをしようと思っていました。本当に嬉しい結果ですし、自分を常にプッシュしてくれたチームに感謝しています。」

マルク・マルケス

「今日は限界までプッシュしましたし完璧なレースでした。序盤から前に出てグリップを理解しつつタイヤを温存しようと思っていました。序盤にアレックスをストレートで抜ける瞬間もありましたが、あえてスロットルを閉じてアレックスについていく戦略を取りました。これは彼のほうがペースが速く、彼についていくほうが後続を引き離せるからです。アレックスについていくレースでしたが、最後は限界でターン7で昨日は転倒しかけ、今日はワイドになってしまいました。アレックス、Ducati、自分にとっても嬉しい結果です。難しいトラックで2位ですからね。」

エネア・バスティアニーニ

「シーズン序盤から考えるとローラーコースターのシーズンですが、結果がついてきました。今日のレースも競争力がありましたし、この表彰台は本当にソリッドでした。100%を尽くした走行でした。優勝も狙っていたんですが、マルケス兄弟がさらにプッシュしていていたので追いつくことが出来ませんでした。いずれにしても自分にとって今年初めての表彰台でした。チームと家族に感謝を述べたいと思いますし、家で応援してくれているファンにも感謝を述べたいと思います。」