今年のMotoGPも前半戦が終了し、8月5日のチェコGPから後半戦が始まります。なお、昨年まで年間18戦で争われたMotoGPは今年から年間19戦となりますので、後半戦はチェコから最終戦バレンシアまで全10戦の戦いとなります。

昨年同様かそれ以上の走りをするのであれば、マルケスのチャンピオンシップ優勝は確実

現在チャンピオンシップスタンディングにおいてトップを快走するマルケスは2位のバレンティーノ・ロッシに46ポイントの差をつけており、その後にマーべリック・ビニャーレス、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ヨハン・ザルコなどが続いています。今シーズンのマルケスは、アルゼンチンとイタリアでノーポイントで終わった以外は優勝か2位のみのシーズンとなっており、非常に安定した走りが特徴です。

なお昨年の後半戦に関しては、マルケスはチェコGPで優勝、オーストリアGPで2位、イギリスGPでリタイア、サンマリノGPで優勝、アラゴンGPで優勝、日本GPで2位、オーストラリアGPで優勝、マレーシアGPで4位、バレンシアGPで3位でシーズンを終えています。昨年の後半戦にこれだけ安定した成績を残したマルケスが、今シーズンの後半に大きく調子を崩すとも思えず、得意とするサーキットでは優勝し、苦手とするサーキットでは表彰台(※今シーズンに関しては2位以下はない)を獲得するという走りを続ける限り、マルケスが今年のチャンピオンシップ優勝を逃すとは思えません。

ヤマハやDucatiはマルケスの3連覇を阻止できるか?

2018年もチャンピオンシップ優勝するとなると、マルケスは2016年、2017年に引き続き3連覇を達成することになります。このマルケスの連覇をヤマハ、Ducatiが止められるか?と考えていくと、ヤマハに関してはバレンティーノ・ロッシは前半戦に表彰台を5度獲得しており、前半戦最後のドイツGPでは2位を獲得。マーべリック・ビニャーレスに関してはシーズン開幕からのフルタンク、ニュータイヤの状態でペースが上がらないという問題を克服しつつあるように見え、後半戦に向けて期待が持てます。

ビニャーレスに関しては特に「電子制御の改善があと少し進めば。。」という話を何度かしていますが、現在ヤマハの電子制御はDucati、ホンダに比べて一歩遅れていると言われています。電子制御の面で元々一歩先を行っていたDucati、2016年初めにDucatiからエンジニアを引き抜いたホンダは今シーズンに関してはエンジンが強力になったこともあって、ストレートスピードや加速に関しても昨年ほどの弱点とは言えなくなってきました。夏休みに入る前にビニャーレスは「夏休み中にマシンの改善が進めば。。」と話していましたが、こうしたヤマハの電子制御面に関する改善がどの程度されたのかを後半戦のチェコGPの舞台となるブルノで見ることが出来るのか、チェコGPのレース後のテストでそれが確認出来るのかは定かではありませんが、前半戦を見る限り、マルケスの勢いを止める事が出来る可能性はヤマハのほうがDucatiよりも高いと言えるでしょう。

昨年はシーズン後半の強さが目立ったドヴィツィオーゾですが、今シーズン前半に関しては開幕戦カタール以外の優勝はなく、その後の表彰台もイタリアGPで獲得した2位のみとなっています。一方チームメイトのロレンソはシーズン前半はマシンのフィッティングに苦戦したものの、タンクの改善が進みブレーキングでマシンをしっかりホールドして、レース後半に向けて体力を温存することが出来るようになると一気に戦績が向上。イタリアとカタルーニャの2連勝も記憶に新しいところです。その後のレースにおいても表彰台獲得は出来ていないものの、レースの中で大きな存在感を発揮するレースが続き、トップでマルケスを始めとする選手たちと優勝争いを繰り広げています。

こういった内容を加味して考えていくと、マルケス3連覇を止める可能性が最も高いのはモビスターヤマハの2人であるものの、マルケスが今後転倒を重ねる可能性、さらに通常のレースにおいて表彰台を逃す可能性は低く、ヤマハの2人が優勝しつつマルケスが3位や4位で終わるためには、Ducatiファクトリーの2人がマルケスを抑えつつ2位、3位を獲得するというレース展開が必要です。

マルケスとのポイント差を考えた時に、ロッシ、ビニャーレスにチャンピオンシップ優勝の可能性はあるのか?

現時点でマルケスとロッシのポイント差は46ポイント、マルケスとビニャーレスのポイント差は56ポイントとなっているため、モビスターヤマハの2人がチャンピオンシップ優勝をするためには、ロッシもしくはビニャーレスが優勝、2位を続けて獲得することが大前提で、マルケスが3位以下であるというレースが続く必要があります。

優勝ライダーが25ポイント、3位のライダーが16ポイントを獲得するわけですから、単純にロッシが優勝を重ねてマルケスが3位となるレースが続いたとしても、1レースごとに縮まるポイント差は9ポイントとなり、そうなると残り10戦の中で5戦はこうしたレースがないとロッシはマルケスに追いつくことが出来ません。またロッシが優勝、マルケスが4位となるレースが続いたとすると、1レースごとに縮まるポイント差は12ポイントとなり、ロッシがマルケスに追いつくには少なくともこういった形のレースが4戦必要です。

しかし残りの10戦の中でマルケスが1勝もしないという可能性は極めて低く、ロッシ、ビニャーレスいずれかの選手が、後半戦に4勝以上の勝利を収めるという未来を想像することも少し難しいと言えます。そのため前半戦からの流れを考える限り、ロッシ、ビニャーレスがチャンピオンシップ優勝をする可能性は低いと言わざるを得ません。とは言え、MotoGPにおいては常々Never say Never(あらゆる事が起きる可能性がある)と言われますし、マルケスが複数のレースで転倒する、マシントラブルに見舞われる、他の選手の転倒に巻き込まれる、怪我をして数戦欠場するという可能性もゼロではありませんので、まだまだチャンピオンシップの行方が決定したと言うには時期尚早でしょう。

(Photo courtesy of michelin)