ヤマハは2026年シーズンより、長年にわたってチームの象徴でもあった直列4気筒エンジンを廃止し、新たにV4エンジンを搭載したYZR-M1でMotoGPに参戦することを正式に発表した。

直列4気筒エンジンに別れ、新時代の幕開け
スペイン・バレンシアでの最終戦をもって、ヤマハの直列4気筒エンジンはMotoGPにおける最後のレースを迎えた。2002年のYZR-M1初登場以来、このエンジンはバレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンソ、ファビオ・クアルタラロら名ライダーを通じて、8度のライダーズタイトル、7度のチームタイトル、5度のマニュファクチャラーズタイトル、さらに5度のトリプルクラウンを獲得するなど、輝かしい実績を築いてきた。通算429戦に参戦し、125勝、350回以上の表彰台を記録しており、間違いなくMotoGPにおけるヤマハの競争力の核となっていた。
V4エンジン投入の背景と展望
ヤマハはこれまで度重なる技術的課題に直面し、特に加速性能やエアロダイナミクス対応の遅れが指摘されてきた。近年、他メーカーがV4エンジンでアドバンテージを築く中で、ヤマハもその潮流に乗る決断を下した。2025年シーズン中に実施されたワイルドカード参戦やテストにより、V4エンジンの実力を確認。加速力やブレーキング時の安定性、そして現代のタイヤ特性や空力パッケージへの対応力で明確な利点が見られたことが、今回の決断を後押しした。2026年のバレンシアテストでは、すべてのヤマハライダーが新型V4エンジンを搭載したマシンで走行予定。ヤマハにとっては、新たな挑戦の始まりだ。
鷲見崇宏(モータースポーツ開発部部長)
「直列4気筒エンジンは、長年ヤマハの哲学の中心にありました。数々の勝利とともに、我々の精密さとコントロール性への評価を築いてくれました。開発に携わったすべてのライダーとエンジニアに感謝しています。ただ、MotoGPは常に進化しています。我々もその流れに適応しなければなりません。V4はヤマハの”挑戦する精神”とレーシングDNAを融合させたものであり、トップ争いをするための技術的解決策です。目標は変わらず、ライダーに勝てるマシンを提供し、世界中のファンに『感動=Kando』を届けることです。」
マッシモ・バルトリーニ(ヤマハ・ファクトリーレーシング テクニカルディレクター)
「V4エンジンへの移行は簡単な決断ではありませんでした。加速性能、コーナリング挙動、すべての面を徹底的に分析した結果、この構成が我々の求める変化をもたらすと確信しました。2025年のワイルドカードでのテストでもその手応えを得ており、開発の初期段階にしては期待以上の成果を確認できました。2026年シーズンに向けて、さらにこのパッケージを磨き上げていきます。また、2027年の技術レギュレーション変更を見据えても、V4という構成はバイクのレイアウトや空力開発の面で優位性があると判断しています。」
世界選手権を制したヤマハ YZR-M1(直列4気筒)一覧
2021年:ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)
2015年:ホルヘ・ロレンソ(Movistar Yamaha MotoGP)
2012年:ホルヘ・ロレンソ(Yamaha Factory Racing)
2010年:ホルヘ・ロレンソ(Fiat Yamaha Team)
2009年:バレンティーノ・ロッシ(Fiat Yamaha Team)
2008年:バレンティーノ・ロッシ(Fiat Yamaha Team)
2005年:バレンティーノ・ロッシ(Gauloises Yamaha Team)
2004年:バレンティーノ・ロッシ(Gauloises Fortuna Yamaha Team)
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。