苦難の2025年シーズンと内面的な戦い
マルク・マルケスにとって2025年シーズンは、キャリアの中でも最も内面的な戦いを強いられた年だった。自身の心と向き合いながらも挑戦に打ち勝つために多くを変えたと語る彼は、怪我によりシーズンを途中で終えながらも回復は順調であるという。中でもカタールGPは転機となり、苦手なサーキットでの勝利は大きな自信へとつながった。また、アレックスとの関係にも触れ、ライバルとしての緊張の中でも兄弟としての絆を深めたことが明かされた。未来に向けてはライバルチームの台頭やルール変更にも言及し、自らの直感を信じて進む姿勢を強調。勝利を続けられなくなれば引退すると語るその言葉には、チャンピオンとしての覚悟がにじんでいる。

自分自身との戦いと回復への道
「今年のチャンピオンシップは最も重要なもので多くの物事と戦ってきましたが、自分自身が最も大きな敵でした。ただこの挑戦に打ち勝つために色々な物事を変えました。今年は怪我でシーズンを途中で終えましたが、現在は怪我の状況は良くなっていますし、ドクター達も自分の状態に満足しています。新しい怪我は以前の怪我に影響はありません。冬の間に怪我を治すことに全力を注ぐことになりますが、これからお祝いという時に怪我をしているのは好ましくないとは言え、治すには最適な時期です。シーズンが終了している状況ですからね。」
スピードへのこだわりと進化する自己認識
「今シーズンは大きな学びを得ましたが、ライバルもこのインタビューを見るでしょうからすべて語るつもりはありません。最も重要なのはスピードがあることです。スピードがあれば状況をコントロールすることが出来ます。自分自身が過去と比べてベストかはわかりません。以前の自分も異なる強みを持って勝利をしていましたからね。今はまた違うフィジカルコンディション、メンタルで戦っていますが、状況に適合していく必要があります。2013年のようなライディングはもう出来ません。」
転機となったカタールGPでの勝利
「今年最も重要だったのはカタールでしょうね。オースティンでは大きなミスをしてから挑んだレースでした。スプリント、そしてメインレースでも優勝して37ポイントを獲得しました。自分のライディングにとっては難しいサーキットでの勝利でしたから、今年は違うぞと感じたんです。」
アレックスとの関係と兄弟としての成長
「タイの後でアレックスが今シーズンは非常に強力なライバルだと気が付きました。アレックスを抜く時はミス1つも出来ません。彼とは兄弟で互いに尊敬があります。でもレースですから間違いがあるかもしれません。他のライダーを抜く時にフロントが滑るかもしれません。兄弟であると同時にレースの中でそうした間違いがあるかもしれません。でも翌日はまた別の1日が始まるということで、兄弟でお互いに納得していたんです。2人で競争をする中で緊張関係を作り出すか、今までよりも仲の良い兄弟であり続けるか選ぶことが出来ましたが、2人とも後者を選んだんです。今年は互いに助け合うことでMotoGPに歴史を作ることが出来ました。」
ライバルへの敬意と復調への期待
「ペッコには早くもとのレベルに戻って欲しいです。彼は非常に繊細な感覚を持っていますから将来的にも彼の力が必要です。ペッコにスピードは失われていません。特にもてぎでは彼のスピードに全くついていけませんでした。時には2ヶ月ですべてをリセットすることが出来ますから、彼がマレーシアテストで完璧な状態で戻ってくることを期待しています。」
ジジ・ダッリーニャとチームへの信頼
「ジジ・ダッリーニャには本当に感謝していますしチームに感謝しています。彼らのおかげで自分の才能を示すことが出来ました。彼らが自分を信頼してくれていることは伝わっていますし、彼らにとって自分をファクトリーに移籍させるという大きな決断をしてくれました。ジジ・ダッリーニャはすべてのボスですが、彼がすべてを完璧にコントロールしてくれています。」
プレッシャーと人間らしさに向き合う姿勢
「自分がトラックで”あのコーナーでは最悪だった”と言っても、ジジは”君は絶対に最悪な走りなんてしない。良かったか悪かったかだけだ。”と言ってくれて、あの言葉には本当に救われました。自分達はライダーですが人間です。いくつかのトラックではプレッシャーを感じたり自分を疑うこともあります。それにDucatiのファクトリーチーム、チャンピオンシップを争うわけですから、プレッシャーは大きいんです。」
ライバルチームの台頭とルール変更への見解
「ライバルの中でアプリリアは強力な存在になってきています。KTMもいいですし、ホンダも序盤と比べて大きく前進しています。MotoGPですから常にライバルも進歩しています。Ducatiは最高のバイクがあり、最高のチームです。2026年はチャンピオンシップにおいても今後に備えて大きく変わって行く年です。MotoGPは今まで大きく変わることはあまりありませんでしたが、これからはルールも変わりタイヤも変わっていきます。その中でどれが良いバイクが良いプロジェクトになりそうか予想することは容易ですが、それが正しいかはわかりません。」
キャリアの終着点と勝利への執念
「ライダーとしてキャリアを積んでいくなかでは自分の直感に従うしかないんです。その中で勝利を続けてチャンピオンシップ争いを続けることが重要で、それが出来なくなれば引退です。これこそがゴールで自分の肩にのしかかるプレッシャーでもあります。」
中の人は元スズキ(株)気になるバイクニュースを2014年から運営しています。愛車遍歴はGSX-R1000K5、DucatiモンスターS2R、Ducati 916、XR230F、GSX-R600 K7、最近はまた乾式クラッチのDucatiに乗りたいと思っています。