スズキ時代は将来を大いに期待されていたマーべリック・ビニャーレス。今年も練習走行や予選ではスピードを発揮出来るものの、決勝レースとなるとどうにも結果が残せず成績が安定しません。ヤマハ移籍当初の2017年はカタール、アルゼンチンと2連勝したものの、その後はフランスで優勝した以降は2017年シーズンは優勝がありませんでした。

2018年シーズンはオーストラリアGPでの優勝以外に優勝はなく、今年はスペインGPでの3位表彰台が最高順位となります。先週末のカタルーニャGPではロレンソの転倒に巻き込まれたことでノーポイントとなり、アルゼンチンでフランコ・モルビデッリ、フランスでフランセスコ・バグナイアに突っ込まれてリタイアしたレースに続き、今回も他のライダーに接触されたことでレースを終えています。

ヤマハ自体がホンダ、Ducatiに比べて戦闘力が低いことも事実ですが、マーべリック・ビニャーレスはスタートがそこまで得意ではないこと、燃料タンクが満タンの状態での序盤数周のペースが遅いことなどが弱点で、グリッド位置からスタート数周で後方に沈んでいるレースが何度もありました。一方ルーキーながら圧倒的な速さを誇るファビオ・クアルタラロは決勝でも着実に結果を残しており、成績が上向いてくるのはこれからが予想されるものの、フランコ・モルビデッリも良い形でシーズンを送っています。

ロッシ、VR46、ヤマハの3者の関係性からも、今後ロッシが引退した暁にはモルビデッリがロッシの後を継ぐ形となり、将来性、スピードがあるファビオ・クアルタラロがファクトリーチームに昇格していきそうな流れですが、ここまで目立った成績が残せていないマーべリック・ビニャーレスの今後には、やや暗雲が立ち込めていると言えるでしょう。

実際にチャンピオンシップスタンディングで見ても、ヤマハ勢トップは5位のロッシ、そして7位にファビオ・クアルタラロビニャーレスは11位、モルビデッリは12位で、ビニャーレスとモルビデッリの差は僅かに6ポイントです。

他のライダーの転倒に巻き込まれているためにポイントを獲得出来ていないとは言え、ロッシが2020年で引退か?と囁かれる中、ロッシ引退後にビニャーレスがヤマハのエースとして、ホンダのマルケス、Ducatiのドヴィツィオーゾ、そして実力をつけてきたスズキのリンスと互角に戦う姿は、今の状態からは想像が出来ません。

シーズン中のアップデートが凍結されているエンジン以外にも、路面グリップ、路面温度によっては安定してスピードを発揮出来ないなどシャーシの改善も求められるヤマハですが、戦闘力の低いバイクであってもスピードを発揮出来るライダーがヤマハには必要です。そして、現時点ではあらゆる引き出しを駆使して成績を残すことが出来るロッシ、神の子と言われるほどの才能を見せるファビオ・クアルタラロしか、M1で確かな戦闘力を発揮していないのが現実です。

ホンダは曲がらない、乗りにくいと言われ続けているRC213Vをライディングテクニックで曲げて走ってしまうマルケスが1人安定して勝利を続けていますが、ヤマハには、良く曲がるが立ち上がりやストレートが遅く、タイヤマネジメントが難しい(エッジグリップを使い切ったら終わり)バイクでもなぜか勝利出来るライダーが必要です。これがバレンティーノ・ロッシ引退後は、マーべリック・ビニャーレスではなく、ファビオ・クアルタラロなのではないか?とヤマハ内部でも考え初めているのではないでしょうか?2021年以降もマーべリック・ビニャーレスがヤマハファクトリーチームで走り続けるには、それなりの成績を2020年に着実に残すことが必要です。

(Photo courtesy of michelin)