プロダクションベース車両におけるラグナ・セカ・スピードウェイでのブレーキングシステム

WSBKは7月12日から14日かけてラグナ・セカ・スピードウェイにおいて第9戦を迎えます。モントレー山脈から150kmに位置するカルフォルニアのサーキットは1957年11月9日に建造され、初めてのレースで優勝したのはフェラーリ500TRでした。

トラックは今までの6度改修を受けていますが、現在の姿は1996年から大きく変化していません。多くの傾斜、自然の地形を活かしたコークスクリューなどがあり、このコークスクリューは137mで18mもの高低差が発生するシケインです。これは5階建てのビルからバイクに乗って飛び降りるのと同様と言えます。

トラックは風が強く、ロングストレートがないため、トップスピードは270km/hに留まります。これはWSBKのその他の12のトラックよりも低い速度となります。結果的にブレーキングの多くはそこまでハードなものではありません。例外的に強力なブレーキングが必要となるのはターン2で、ここではブレーキは4秒間使用されます。

15名のWSBKライダー達と作業を行うブレンボの技術者によると、ラグナ・セカ・スピードウェイは、ブレーキにとっては通常程度の難易度のサーキットです。難易度指数は1~5のうち3で、これは次回ラウンドのポルティマオと同様です。

レース中にブレーキに求められること

世界選手権の中では全長3,610mと短いトラックながら、ブレーキは周回ごとに10回使用されます。これは5,077mのアラゴンと同程度となります。ラグナ・セカはまた、世界選手権の中で最も短いラップタイムとなるサーキットで、1周の中でブレーキが使用されるのは合計で26秒となります。つまり、レースの中で31%の区間でブレーキが使用されることになるのです。

ラグナ・セカの10箇所のブレーキングセクションにおいて、その半分が100m以下のブレーキングとなり、180mを超えるブレーキングが必要なのは1箇所のみです。平均の減速Gは1Gのブレーキングセクションが3箇所あることから1.13Gとなります。スタートからチェッカーフラッグにかけてライダーがブレーキレバーに入力する力はおよそ1,100kgとなります。

最も過酷なブレーキングポイント

10箇所のブレーキングセクションのうち、ラグナ・セカでは3箇所がブレーキングにとって過酷と考えられており、6箇所は中程度、1箇所が軽めとなっています。最もブレーキへの要求が大きいのはアンドレッティ・ヘアピン(ターン2)です。これはここが最もスピードが出る区間であることと、僅かに下り坂になっているからです。スーパーバイクはここでブレーキを4.4秒間使用し、74km/hまで速度を落とします。

スーパーバイクはこのブレーキングを182mで行いますが、カーボンディスクを使用するMotoGPバイクの場合はさらに短い区間での制動が可能です。しかしスーパーバイクは、2%カーボンを含むスチールディスクを使用しているだけでこの性能を発揮しているのです。ライダーは4.5kgの力をブレーキレバーに入力。減速Gは1.3Gに達します。ここでブレンボのブレーキフルードにかかる圧力は9.6barです。

ターン5でのブレーキングは非常に長く、150mで232km/hから105km/hにまで減速を行います。しかしブレンボのブレーキフルードにかかる圧力はここでは8.5barです。これは231km/hで進入、最終的に137km/hまで減速するターン7でフルードにかかる10.9barよりも低くなっています。

コークスクリューは特別なセクションです。これはケーシー・ストーナーがバレンティーノ・ロッシに追い抜かれた場所、バレンティーノ・ロッシがマルク・マルケスに抜かれた場所として多くのファンの記憶に残っているでしょう。スーパーバイクはここに130km/hで進入し、59mブレーキングを行います。このブレーキングの2.1秒間でバイクは71km/hまで速度を落とします。この時バイクにかかる力は3.8kgです。
 

ブレンボの優勝数

スーパーバイクがラグナ・セカに戻ってきてから、ブレンボが勝利を逃したことはありません。カワサキはここで7勝、Ducatiが3勝、アプリリアが2勝を遂げています。Ducatiはここで合計13回優勝していますが、2連続で優勝を遂げたのは2001年のベン・ボストロム、2015年のチャズ・デイビスのみです。