今回のアラゴンでマルク・マルケスのペースは驚異的で、FP1の時点でビニャーレスとの差は1.6秒。FP2では雨が予想されたFP3の前に、多くの選手がソフトタイヤを履いてアタックする中で記録したタイムをユーズドタイヤで楽に記録していた。この時点でヤマハライダー達のスピードは高く、逃げるマルケスとそれを追うヤマハという展開が予想された。

しかしレースが始まってみるとマルケスの速さは1周目から圧倒的で、これにヤマハライダー達が追いすがるも、どう考えてもレース後半に追いつくのは現実的ではないように思えた。

実際にヤマハのマーべリック・ビニャーレスがミラーを抜いて2番手に浮上した8周目の時点でマルケスとの差は4.7秒で、ミラーを抜く前から独走を続けるマルケスに追いつくということを考えるよりは、残りの表彰台をどうやって獲得すべきかを考える必要があったと言える。

レース終了後にあれこれと批評するのは簡単だが、今回のビニャーレスのレース展開は、序盤ミラーを抜いてマルケスに追いつこうと飛ばしすぎた事でタイヤを消耗し、逆にドヴィツィオーゾ、ミラーに抜かれてしまった印象が強い。

マルケスとの一騎打ちを何度も制しているドヴィツィオーゾは、マルケスを抜けるタイミングまで待ってから仕掛ける事がほとんどだが、ビニャーレスの場合はレース全体でペース配分をするというよりは、彼の中でこの選手を抜くと決めた場合は、後先考えずに仕掛けていくケースが多い。

今回、逃げるマルケスは放っておいて、序盤オーバーテイクが難しかったミラーを抜かず、バックストレートでスリップストリームについてDucatiのパワーを利用し後続との差を稼ぎ、レース終盤に温存したタイヤでミラーに仕掛けていればドヴィツィオーゾに抜かれる事も、表彰台を逃す事も無かったかもしれない。

速さ、レース展開の巧みさを兼ね備えるマルケス、ドヴィツィオーゾとビニャーレスが互角に戦える日が来るのはまたまだ先の事のように思えるが、ロッシ引退が囁かれる2020年以降、ヤマハを牽引していくことが期待されるビニャーレスだけに、一刻も早く成熟したレース展開を見せて欲しいところだ。

(Photo courtesy of michelin)