MotoGPにおいてますます重要性を増す「ライダーとバイクのマッチング」

選手とバイク特性の相性が今まで以上に重要になった

バイクの性能差が小さくなっているMotoGPにおいては、今まで以上に選手のライディングスタイルとバイク特性の相性が重要になっていると言える。つまり、ブレーキングが強力だとか、ストレートが速い、コーナリング性能が良い、アンダーステアが強い、スライドコントロールして曲げないと曲がらない、フロントグリップに頼る乗り方、リアグリップに頼る乗り方、スムーズなライディング、アグレッシブなライディングetc…などだ。

数年前からヤマハのYZR-M1はライダーに優しい、ルーキーでも乗りこなしやすいバイクとされてきたが、YZR-M1でも、他のメーカーのバイクでもスピードを発揮した選手はバレンティーノ・ロッシ(ホンダ)、ホルへ・ロレンソ(Ducati)、カル・クラッチロー(ホンダ)程度しかおらず、YZR-M1では成績がぱっとしなかったものの、他のメーカーでスピードを発揮した選手としてはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati)、ポル・エスパルガロ(KTM)などが上げられる。

逆にYZR-M1ではスピードを発揮したものの、他のバイクでは苦戦している選手としては、真っ先にヨハン・ザルコ(KTM)、ハフィズ・シャーリン(KTM)の名前が上がる。ありとあらゆる引き出しを持つMotoGPの生き字引と言えるロッシも、過渡期のDucatiを乗りこなすことは最後まで出来なかったし、多かれ少なかれ、どの選手もバイクとのマッチングに苦戦しているわけだ。

各メーカーのバイク特性とライディングスタイル

MotoGPクラスに昇格以前に、ライディングとバイクの特性が合うだろうと思われていたケースとしては、スーパーアグレッシブな走りで何度も物議を醸し出して来たマルク・マルケスとホンダ、熱いナイフでバターを切るようだと形容されるスムーズな走りが特徴のホルへ・ロレンソとヤマハ、ロレンソに近いスムーズな走りが特徴のヨハン・ザルコとヤマハなどが上げられる。

ここ最近はグリッドの中でのベストハンドリグマシンと言われることが増えてきたスズキのGSX-RRとマーべリック・ビニャーレス、アレックス・リンス、ジョアン・ミルの組み合わせも、マッチングが上手くいった例と言えるが、マーべリック・ビニャーレスはスムーズな走りというよりはアグレッシブな走りが身の上の選手であるため、バイクのライディングに対する許容範囲が広いのだろう。

簡単にまとめると、スムーズなライディングからアグレッシブなライディングまで許容するヤマハのYZR-M1、スズキのGSX-RR、アグレッシブさを求めつつ、フロント周りの神経質さを理解することが求められるホンダのRC213V、アンダーステアという特性のためブレーキングでプッシュ、立ち上がり加速を活かす走り方が求められるDucatiのデスモセディチGP19、Ducati同様にアンダーステア、ハードにプッシュすることを要求するKTMのRC16という図式で理解することが出来る。

ライディングスタイルとバイク特性から移籍先を考える

前述のようにバイクの性能差が小さくなったMotoGPにおいて長く活躍していくには、バイクとのマッチングが非常に重要になってきている。来年どこそこのチームのシートに空きが出るから飛びつくというのではなく、そのメーカーのバイクとの相性は良さそうか?そこで相性が良かった場合のキャリアパスは?といったことをしっかりと考えて選手達も移籍を考えていくことになる。(※もちろんそんなことは当然考えているだろうが。。)

下位クラスの選手達にとってMotoGPクラスで走ることは子供の頃から夢、さらにサテライトチームの選手からするとファクトリーチームで走ることもまた大きな夢であることは間違いないが、ライディングスタイルが全く合わないメーカーのバイクでMotoGPクラスにデビュー、移籍したとしても、そこで成績を残せなければ選手の評価は下がり、契約更新は難しく、さらに本来はライディングスタイルが合って成績を残せたかもしれないメーカーへの移籍もままならなくなる。

現時点でバイクとのマッチングに苦労しているのは、ホルへ・ロレンソ、ヨハン・ザルコ、ハフィズ・シャーリン、アンドレア・イアンノーネなどが上げられるが、ハフィズ・シャーリン、ヨハン・ザルコはYZR-M1との相性は良かったものの、KTMのRC16との相性は控えめに言っても最悪。ハフィズ・シャーリンはKTMのシートをブラッド・ビンダーに奪われ、2020年はMoto2から参戦するとされている。ヨハン・ザルコは2020年までKTMと契約を交わしており、KTMのCEOであるステファン・ピエラは「途中解雇はしない」と過去のインタビューで答えているものの、2020年の前半までに優勝などで結果を出さない限り、2021年の契約更新はないだろう。

ヤマハからDucatiへの移籍2年目にチームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾを上回る成績を残したホルへ・ロレンソは、シーズン後半は怪我に泣かされたものの、見事に正反対と言えるバイクへの適合に成功した類稀な例だ。ロレンソのホンダとの契約は2020年までだが、現在苦戦しているロレンソも、2020年前半戦までに結果を出せなければ契約更新が出来るかどうかは不明だ。

逆にヤマハのYZR-M1とファビオ・クアルタラロのように、バイクの特性と選手のライディングスタイル、才能が完璧にマッチングしたケースもあるが、ここまで相性が良いとなると、将来的にファビオ・クアルタラロがヤマハ以外のメーカーでスピードを発揮出来るか疑問が残る。

現在22のレギュラーシートがあるMotoGPにおいて、ライディングスタイルとバイクの相性、シートの空き状況などから考えていくと、どの選手にとっても契約更新、昇格時に移籍可能性があるシートの数は3程度しかないのが現状。その中で、相性完璧で昇格するケース、相性はともかく昇格するケース、すでに相性が良い現在の環境で契約更新するケース、環境を変えて新たなチャレンジをするケース、相性、シートの空き状況の問題でMotoGPを去るケースなどがあるが、いずれにしてもライダーとチームの大きなシャッフルは2021年シーズン。2019年後半から2020年前半は、この大シャッフル大会の前兆として、選手とバイクのマッチングを観察する期間となる。

(Photo courtesy of michelin)