ヤマハMotoGPのプロジェクトリーダー鷲見 崇宏氏は、津谷氏の後任として今年からプロジェクトリーダーを務める。今年のM1は外観上大きな変化はないが、内部の変更を行っているとのこと。度々問題となるトップスピードの不足、リアグリップの不足を引き続き改善していくとしている。

鷲見 崇宏

「前半戦ファクトリーチームは思っていたような成績ではありません。ヤマハはバイクを色々と変えているのですが、外観上わかるような部分での変化ではありません。トップスピードの差は昨年よりも拡大しており、そのせいで他のメーカーとのバトルが難しくなっています。引き続き開発を続けていきますが、ヤマハがこのカテゴリーで最もパワフルなバイクであったことはありません。いずれにしても大きな問題として捉えています。」

「バレンティーノ・ロッシに関してはシーズンスタートは良かったものの、ル・マン、ムジェロというヤマハが過去に得意としてきたトラックで苦戦してしまいました。これはハンドリング、タイヤの耐久性など、彼の求めるセッティングを作ることが出来なかったことが原因です。対象的にマーべリック・ビニャーレスは序盤苦戦したものの、バルセロナでベースセッティングを見つけました。それ以降は良い形でレースをしており、アッセンで優勝することが出来ました。この優勝で現行のM1に対して、我々も彼も自信を取り戻しました。」

「サテライトに関してはゼロからのスタートにも関わらず素晴らしい結果を収めており、その内容には満足しています。M1はグリップが低い環境で苦戦していますが、これはM1の特性としてずっと変わっていません。ハンドリングはリアグリップに依存しており、リアグリップは加速にも影響を与えています。セッティング、エンジン特性も影響がありますが、リアグリップの改善を引き続き進めていきたいと思います。

「マーべリック・ビニャーレスはブルノのスタートを失敗しましたが、これはコンディションの要因が大きいと思います。彼のグリッドは路面が十分に乾いておらず、こうした影響が強かったと見ています。確かに彼はシーズン前半にスタートに苦戦していましたが、彼自身がM1のクラッチやエンジンに慣れて改善してきましたし、エンジンのセッティングなどを見直して彼を助けるような改修も行っています。」

「昨年は厳しい1年でしたが、ヤマハ自体がバイクではなく開発のやり方を変えました。ヤマハが認識している問題は電子制御の共通化、そしてタイヤメーカーの変更後に起きています。問題というのは解決出来ないでいるとあっという間に大きくなり増えてしまいますが、現在は10〜20の問題を抱えており、最もクリティカルな部分に集中して開発をしています。そしてこの方向性をライダーに説明し理解してもらったところです。」

「ブルノテストでは2020年のプロトタイプを持ち込みました。ただあくまでも方向性の確認のためであり、フィードバックをライダーからもらい、これを元に開発を進めていきます。ヤマハはあくまでもバイクの基本的な部分の開発に集中しており、外観上わかるような新技術を投入するということは現時点ではありません。将来的には何かしら新しい技術が外観上わかるようなことがあるかもしれません。」

(Source: yamaha-racing)

(Photo courtesy of michelin)