日本を待たずしてタイでタイトルを獲得したマルケス。圧倒的な内容のシーズンから簡単に見られがちがだが、多くのプレッシャーの中でチームと共に様々な改善を繰り返してきたと語る。また今シーズン大きく改善したコンスタントさについては、2015年に転倒の多さでタイトルを逃したことで重要性を痛感したとのこと。まだまだシーズンは続くので日本以降もファビオとの素晴らしいバトルを期待したい。

マルク・マルケス

「2014年は13戦連勝しましたけど、メーカーのレベル、バイクのレベルという意味では今と全く状況が異なっています。今は4メーカーが優勝出来るポテンシャルがあります。(※ホンダ、Ducati、ヤマハ、スズキ)今年自分達にはコンスタントさがあり、弱点に注目してそこを改善しようとしてきました。そうして苦手としてきたレースでもしっかり競争力を発揮してきたんです。」

「このポイント差を見ると楽なレースだったんだろうと思うかもしれません。でも、プレッシャーをコントロールすること、皆が自分の転倒はいつか?と注目し、自分を負かそうと努力する中で戦うのは簡単なことではありません。こういった中で常に素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝です。」

「ライダーにとって野望を持ち続けることは難しいことではありませんが、チーム、すべてのメカニックにとって同じ目標を持って戦い続けるのは簡単ではありません。これが本当に重要なことだと思います。」

「今年のレースの難しさに関しては予想していた通りですが、ファビオの速さは予想外です。ドヴィツィオーゾがコンスタントに速いこと、ビニャーレスがいくつかのレースでスピードを発揮すること、スズキが速くなってくることは想像していました。ファビオに関してはここまで速くなるとは誰も思っていませんでした。彼はシーズンが進むごとにどんどん速くなっていますね。」

「ただ自分達にとって重要なのは、あるレースではDucati、あるレースではヤマハ、あるレースでスズキが速くとも、自分達は常にTOPにいて戦える状態であるということで、これが非常に大きいですね。」

「ファビオがいるからと言って、よりモチベーションが湧くというようなことはありません。彼も多くのライバルの1人です。MotoGPでは毎年新しい顔ぶれ、新しいシチュエーションが発生しますけど、まだバイクよりもライダーのほうが少しだけ重要度が高いスポーツであるということがラッキーだと思います。」

モチベーション維持にはチームの存在が大きい

「時にはバイクの調子がいまいちで自分が絶好調の時もあれば、その逆でバイクは最高だけど自分が不調ということもあります。そうした中で最適な妥協案を見つけていくことが難しいんです。そこで重要なのがチームで、素晴らしいチーム、人々に囲まれているとモチベーションを維持するのが容易なんです。

「それに自分はいつも弟とトレーニングしていますし、夜はいつもディナーを一緒にしています。こうしたことがいつもの日常を維持するのに役立つんです。」

簡単にレースをしているように見えるがそうではない

「バイクのベースがあって、そこからさらにレベルを引き上げていくという作業が重要で、レプソル・ホンダは素晴らしい作業をしていると思います。今年はオースティン以外はすべて表彰台獲得ですから簡単にレースをしてると思うかもしれませんが、そうではありません。」

コーナーの中でいかに転倒しないよう肘を使っているか、いかにバイクの上で体を動かしているか、普段フィジカルを維持するためにどんなトレーニングを積んでいるか想像もつかないでしょう。確かにホンダは素晴らしいバイクですが、しっかりと性能を発揮するにはバイクを信じて全力で向き合う必要があるんです。」

シーズン前半はエンジンブレーキが問題になっていましたが、HRCは素晴らしい技術者がいますから、彼らがこの問題を回避する方法を見つけてくれましたので、今は問題ではありません。序盤の5戦くらいまでは苦戦していました。当然新しいエンジンですからね。ベストという状況ではありませんけど、性能がコンスタントであるということが重要です。」

2015年にタイトルを逃してコンスタントさの重要性を理解した

2015年にタイトルを逃したことで学習出来たことは大きいですね。レースの中での転倒があまりにも多かったんです。当時自分は23、24とかでしたけど、経験が足りませんでしたね。そこで自分が気づいた自分の弱点がコンスタントさだったんです。毎年コンスタントさを改善しようとしてきましたけど、シーズン同士の比較というのは難しいものですが、今年はコンスタントさが強みになっています。これはチームと共に作業してきた結果だと思います。」

今年の開幕は肩の手術をしていたので、2011〜2012年の複視の問題があった時の次に厳しいシーズンオフでした。マレーシアテストの段階でそこまで悪くない状況だったんですが、ドクターからは完治には3ヶ月、4ヶ月かかると言われていました。でも自分はそれを信じずに、1ヶ月で治すと決めていました。徐々に回復が進んできて、3月には普段と同じくモトクロストレーニングをはじめました。」

日本GPは日本人スタッフと楽しみたい

「日本でのレースは日本人スタッフと共に楽しみたいですね。皆日本でタイトルを決めたほうが喜ぶのかと思っていたんですけど、昨日HRCの野村社長からメッセージをもらって”タイで出来ればタイトルを決めて欲しい”とあって、プレッシャーをかけてもらいました(笑)今年はあとはホンダでの3冠を狙っていきます。チームチャンピオンシップはたしか19ポイント差です。簡単な目標ではありませんが、なんとか達成したいと思っています。」

「ファビオは今シーズン自分にとっては厄介な存在ですね(笑)でもチャンピオンシップで見ればポジティブな存在です。確かにMotoGP昇格が早すぎたのでは?という話が何度もありましたし、シーズン前半は良い状況ではなかったでしょう。彼はタイトル争い候補になるでしょうし、スピード面ではパドックの中でも随一です。」

「ロレンソに関しては怪我もあって大変な形でシーズンを送っています。怪我を治すことに集中してきた後は、バイクのフィーリングを掴むことに苦戦しています。ホンダはロレンソを助けることに努力していますし、それはクラッチローに関しても同様で、彼も今年のバイクに良いフィーリングを感じていません。でもHRC、レプソル・ホンダは常にバイクを改善しようとしているんです。」

ファンの記憶に残るライダーでありたい

「現役の間はさらに勝利を重ねることを考えますよね。でも引退した後に人々が覚えているのはマモラのようなライダーです。つまり常にプッシュして人々の印象に残るレースをした選手です。Q2でプッシュしたのも、今日最終ラップでプッシュしたのも、常にこうしたことを考えているからです。」

「こうして常にプッシュしようという姿勢が2013年、2016年のタイトルに繋がっていますし、同時に2015年のようにタイトルを逃したことにも繋がっています。自分もチームもこうした側面を抑えよう、コントロールしようとしていますが、本来こうしたライディングをして人々の記憶に残りたいと思っているんです。

「今年の数字は素晴らしいものがありますから、今年をさらに改善させるのは難しいですね。自分のヒーローを思い出すと彼らは常に改善を続けていました。このスポーツはライダーだけでなくチーム、バイクの改善が重要ですし、ライバルのレベルにも左右されます。ライバルのレベルが高くなれば自分達のレベルも十分ではなくなります。来年の目標ももちろんタイトル争いで、難しいとは思いますが今年のレベルをさらに改善していきたいと思っています。」


(Source: HRC)

(Photo courtesy of michelin)