リン・ジャービス「二社によって製造された同一スペックのバルブが、レギュレーションに抵触すると思っていなかった」

リン・ジャービス「二社によって製造された同一スペックのバルブが、レギュレーションに抵触すると思っていなかった」

異なる二社が同一スペックのバルブを製造

ヤマハのリン・ジャービスは、今回のヤマハのレギュレーション違反について詳細を語った。問題の発端は異なる二社がバルブを製造していたことで、日本のヤマハ側は、同一仕様のエンジンバルブならば、サプライヤーAとサプライヤーBが製造したものでも同一のバルブと見なされるとレギュレーションを解釈していた。

そして、本来開幕戦だったカタールGP時点でホモロゲーション取得したエンジンが使用していたバルブ(バルブA)とは異なるバルブ(バルブB)を使用したエンジンで、開幕戦ヘレスでメカニカルトラブルが発生。ヤマハはバルブBに技術的な問題があることを理由にバルブの変更を申請するが、MSMA(モーターサイクルスポーツ製造者協会)側はホモロゲーションを取得しているバルブについての変更要求を却下、追加資料の提出を要請した。

ヤマハは安全上の理由から、社内的な決定としてバルブBが組み込まれたエンジンの使用を停止。すべてのライダーでバルブAを使用したエンジでシーズンを戦ってきた。

ここからは推測だが、少ないエンジン基数でシーズンを戦うライダー達のエンジン寿命の観点から、ヤマハはバルブBを使用したエンジンのバルブをバルブAに変更して復活させるべくMotoGPスチュワードパネルに連絡、自社の調査結果を元に同一スペックのバルブと説明するも、レギュレーション違反が発覚したということではなかろうか。

ホモロゲーション取得していないパーツでレースをしたのと同罪

しかし、考えてみればレギュレーション違反だというのは当然で、ヤマハがしたことは、当初ホモロゲーション取得したエンジン機構とは異なる仕様のエンジンで開幕戦を戦っていたことであり、開幕戦ヘレスで優勝したファビオ・クアルタラロが使用していたエンジンが、実はホモロゲーション取得したエンジンよりも圧縮率が高かった、燃費が良かった、排気量が大きかった、使用禁止材料を使っていたということと本質的には同じなのだ。

今までは、メーカー側がホモロゲーション取得をしたパーツと完全に同一のパーツを使用してエンジンを組み上げているかどうかは、ある程度メーカー側の信頼に任されていた部分があるが、今回のヤマハのレギュレーション違反によって、MotoGPスチュワードパネルの審査の目をかいくぐって、異なるパーツを使用したエンジンでレースが出来てしまうことが証明された。

今後はシーズン開始前のホモロゲーション取得が、より一層厳格化されることは間違いないだろうし、MotoGPバイクの製造、組み立て工程において何らかの外部チェックが必要という声が出てきても不思議ではない。さらには、メーカー間、運営側とメーカー側で疑心暗鬼が生まれたことは言うまでもない。
リン・ジャービス「二社によって製造された同一スペックのバルブが、レギュレーションに抵触すると思っていなかった」

今回の件で唯一無実なのはライダー達

リン・ジャービス

「今回の制裁でコンストラクターズポイントで50ポイント失い、チームについては37ポイントと20ポイントを失いました。これは今年のチームとコンストラクターズタイトルにおいて大きな影響があります。いずれにしてもヤマハがミスをしたことは間違いありませんから制裁を受け入れました。今回の件で無実だったライダーに制裁が課せられなかったのは幸運でした。

当初から2つのサプライヤーによるバルブの使用を考えていた

「今回バルブに関してレギュレーション違反があったわけですが、バイクのパフォーマンスには影響がありません。バルブAとバルブBはパフォーマンス面で同一なんです。それによってライダーが何かをプラスを得たとは思いません。今回のミスは日本のヤマハ発動機側のミスで、当初から2つの異なるメーカーのバルブを使用することを考えていました。これは昨年からのサプライヤーが今後の継続生産が出来なくなることによるものです。」

リン・ジャービス「二社によって製造された同一スペックのバルブが、レギュレーションに抵触すると思っていなかった」

ホモロゲーション取得したエンジンと開幕戦に使用したエンジンのバルブが異なっていた

「これによって2つの異なるサプライヤーによって製造されたバルブAとバルブBが存在することになったんです。ホモロゲーション取得のためのサンプルエンジンに使用していたのは、シーズン後半に使用を考えていたバルブでした。(※おそらくバルブA)これは日本のエンジニアが、スペック上 同一バルブならば、バルブAとバルブBを使用しても、レギュレーションに抵触すると考えていなかったためです。」

「しかし実際のレギュレーション上においては、2つのサプライヤーによって製造されたバルブは同一のものとは見なされなかったんです。これは日本側のレギュレーション解釈の問題です。2つのサプライヤーが製造した同一スペックのバルブは同一のものと見なされると考えていたんです。」

「残念なことに、多くの人々がそれは真実ではないと信じています。この世界では一旦嘘だと思われてしまうと誰も信じてくれないものです。いずれにしても、これはヤマハのシーズンプランニングのミスと言えます。」

シーズン開始後にエンジン、バルブの変更はしていない

「実際、ヤマハは今年のエンジンに関してはシーズン開始後にバルブの変更や、エンジン変更は行っていません。開幕戦ではマーべリックが練習走行、バレンティーノは決勝でエンジンに問題が発生しました。しかしMSMAにこのエンジンのバルブ変更を要請したところ、バルブ変更に関して、安全上必要である理由を用意することが出来ずに申請が認められませんでした。

「ですから問題は3つあって、1. 二社の異なるサプライヤーがバルブを製造していたこと。2. サプライヤーBのバルブが品質に問題があったこと。3. サプライヤーBのバルブを使用するエンジンがシーズンを通じて使用出来なくなったことなんです。ですから開幕戦を終えた時点から非常に厳しい状況に置かれていたわけです。」

サプライヤーBのバルブを使用したエンジンは、開幕戦以降の使用を凍結しました。唯一の例外は2人のライダーがスティリアGPで使用した練習走行と予選のみです。その時点まではバルブは同一のものだと考えていたんですが、レギュレーション上は違うバルブだと捉えられる可能性があると判断し、バルブBを使用したエンジンの使用を凍結したんです。その後ヤマハ側からバルブAとバルブBが同一のものであると証明しようと調査を始めたんです。」

バルブBを使用したエンジンが使用出来なくなったので、ビニャーレスはエンジンが足りなくなった

「ホモロゲーション取得をしたエンジンと異なるバルブを使用したエンジン(※バルブBを使用したもの)は使用が禁止されてしまったので、マーべリック・ビニャーレスはエンジン基数が足りなくなり、新しいエンジンを新たにおろすことになったわけです。(※バルブAを使用したエンジン)」

マーべリック・ビニャーレスは実際まともに使えるエンジンが2基しか残っておらず、3基目は問題があったために新しいエンジンを使用することを決定しました。これは将来的な問題を避けるために必要だったんです。フランコ・モルビデッリについてはエンジンに問題は起きていませんから、シーズンを走りきれることを願っています。」

ファビオは現在3基、バレンティーノは2基使えるエンジンがあります。レースごとに状況を注視する必要がありますが、問題が発生しないことを願っています。」

(Source: yamaha-racing)

(Photo courtesy of yamaha-racing)