マルケス、キャリアの転機を迎えた苦悩と復活
マルク・マルケスは、かつてホンダで4年連続タイトルを獲得し無敵を誇ったが、度重なるケガと手術の影響でキャリア存続さえ危ぶまれる時期を経験した。早すぎた復帰が最大の過ちだったと振り返り、引退を考えたほどの苦境の中で再び自らの競争力を確かめるためにDucatiを選択。グレシーニで自信を取り戻し、今ではファクトリーチームで優勝を重ね、兄弟でのワンツーフィニッシュという奇跡的な瞬間も手にした。引退の考えは完全に消え去り、今は楽しみながら挑戦を続けていると現在の様子を振り返った。





「無敵」の自信と早すぎた復帰の代償
「引退の考えは完全になくなりました。今は楽しんでいますし、楽しみながら勝利を続けています。勝利を重ねているので自信もありリラックスできていますが、状況が突然変わることもあると理解しています。ホンダでは4年連続でタイトルを獲得していましたから、無敵だと思っていましたし悪いことは何も起きないと思っていました。最大のミスは手術後に早めに復帰しすぎたことです。あの早すぎた復帰も悪いことは起きないだろうという余計な自信があったためでした。」
苦難のリハビリと「引退」寸前の苦悩
「自宅でリハビリを続けながら復帰を図っていました。あの状況もハードでしたけど2021年に復帰した時が非常に辛かったですね。ライディングするにあたって体が奇妙な感覚でしたし、腕が今までと異なっていました。この段階で腕の骨の接合位置がおかしいことに気がついたんです。腕がもの凄い痛みを感じていたんです。あの時点ではこれ以上レースを続けられないと思っていました。引退しなかったのはなぜかと言われると、自分自身に競争力があるのかをもう一度確認したくなったことが大きいです。そのためにはグリッド上で最高のバイクを探す必要があり、それがDucatiでした。メーカーとの関係性、サラリー、築き上げた歴史、そういったものをすべて忘れて、自分の疑問に答えたかったんです。アレックスからDucatiのことは多く聞いており、そのコメントがこの意思決定の大きな支えになりました。」
グレシーニでの再出発とDucatiファクトリー移籍の決断
「グレシーニでの1年が勝負でした。あの1年で競争力を発揮できなければキャリアは終わりだと思っていました。多くのリスクを冒した決断でしたし、グレシーニで結果を残せなければ終わりという状況でした。グレシーニで自信を取り戻すことができましたし、優勝する感覚を思い出すことができました。その後Ducatiファクトリーチーム移籍して、チャンピオンシップ優勝を狙う上で完璧なチームに来たことを実感しました。プレシーズンはチャンピオンシップ優勝することをターゲットにしっかりと備えてきました。チャンピオンシップを戦う上でこうした結果を続けられることは想像もしていませんでした。多くのレースで優勝し、苦戦してきたサーキットでも勝利しましたし、繰り返すことが難しいものだと思います。バイクの世界でMotoGPを超える大会はありませんが、その大会で兄弟でワン・ツーを独占できるなんてことは信じられない状況です。こうした状況で弟と優勝と2位を獲得していくと、2人の関係はぎくしゃくしそうですが、全く逆で今まで以上に弟との絆が強固になりました。自分がいなければ弟がチャンピオンシップをリードしていたでしょうから、同じ状況になったとて弟はもうアドバイスはくれないでしょうね(笑)」
最大のライバル・ペッコへの信頼と競争の本質
「過去4年間高い競争力があったのでタイトル争いのライバルはペッコだと語っていました。自信を失ってしまうと今までよりライディングが固くなってしまうんです。ライディングが固くなると体を大きく動かせなくなるので、バイクが曲がらなくなります。ただ、ペッコは必ず競争力を取り戻せると思います。彼は才能があり最高のチームがあります。挑戦イコール達成できるというわけではありません。ただ挑戦すること自体が成功だと言えるんです。いつか引退する時に"この挑戦によってどうなっていたか"なんてわからないわけですからね。」