マルク・マルケスが7度目のMotoGPワールドチャンピオンに輝いた。この復活劇はプロスポーツの歴史においては奇跡、大きな偉業と言える。以前カタルーニャGPのプレスカンファレンスで、ペドロ・アコスタがマルク・マルケスのタイトル獲得はマイケル・ジョーダンのバスケットボールようなスポーツ史に残る偉業だと語ったが、今回マルク・マルケスが成し遂げた復活劇は、モータースポーツ史のみならずスポーツ全体の歴史においても最も偉大なカムバックのひとつとして語り継がれるものだ。

ニキ・ラウダ:炎から蘇ったF1レジェンド

スポーツにおける復活劇としてまず名前が上がるのがニキ・ラウダだ。1976年ニュルブルクリンクでの大事故により重度の火傷を負い、生死の境をさまよったが、わずか6週間後に復帰。雨の富士での最終戦ではリスクを避けリタイアを選択するも、翌1977年には2度目の王座に返り咲き、さらに1984年にはわずか0.5ポイント差で3度目のタイトルを獲得した。

マイケル・ジョーダン:バスケットボール界の王者

ペドロ・アコスタがマルケスと並べて挙げたのがマイケル・ジョーダンだ。1993年にバスケットボールを離れ野球に挑戦するも、1995年にシカゴ・ブルズへ復帰。その後1996年から1998年にかけて3連覇を達成し、スポーツ史に残る復活を遂げた。

モニカ・セレス:勇気と勝利の物語

16歳で全仏オープンを制し、20歳までに8つのグランドスラムを獲得したモニカ・セレス。しかし1993年、試合中に観客から背中を刺され長期離脱を余儀なくされた。それでも1996年に復帰し、全豪オープンを制覇。さらに2000年シドニー五輪で銅メダルを獲得し、チームでも偉業を成し遂げた。

タイガー・ウッズとペイトン・マニング:アメリカの象徴

長年の腰痛に苦しんだタイガー・ウッズは、マスターズで復活優勝を果たし、史上最年長での戴冠を達成。
一方、NFLの名QBペイトン・マニングは首の手術を4度受けながらもデンバー・ブロンコスで現役最後のシーズンにスーパーボウル制覇を飾った。

マルク・マルケス:2184日ぶりの世界王者

最後にマルク・マルケスだ。2013年にルーキーでMotoGPタイトルを獲得し、その後7年間で6度のタイトルを獲得。ホンダ時代の彼はまさに無敵状態に思えた。しかし2020年ヘレスでの転倒で右腕を骨折し、そこからMotoGP史上最も長い復活の道が始まった。

かつてのような成功はもはや当然ではなかった。複数回の上腕の手術、複視、肩の負傷そして数カ月の離脱。キャリアを救うための大手術にも臨んだ。勝つために、レースを楽しめるようになるために、ホンダからDucatiへと移籍、グレシーニで久しぶりのバイクで走る楽しさを感じ、久しぶりの優勝を手に入れた。そして、結果を残してDucatiファクトリーチームへと移籍、2025年シーズンはフランチェスコ・バニャイア不調の中、他のライバルを寄せ付けない安定感と速さを発揮し、チャンピオンとなった。

これでマルケスはバレンティーノ・ロッシと共に7度のMotoGPワールドチャンピオンとなり、これを上回るのは8度最高峰クラスタイトルを獲得してるジャコモ・アゴスチーニのみ。これからも続くマルク・マルケスのキャリアを考えると、アゴスチーニの記録を上回ることが期待される。